大学院入試

November 18, 2017

「できない」ということばの呪力

 大学院入試の研究計画書や英語の指導などで,受講生から「これ以上はできない」と言われることがある。もういっぱいいっぱいなのでこれ以上無理なことは言わないでほしい,ということなのだろう。そのように言われたあとは,もちろんぼくからのその人に対する要求水準は下がる。つまり,その人にできなそうなことは指示したり指摘したりしなくなるのだ。これで安心してしまう人もいるわけだが,注意しなければならないのは,下がったのはぼくのその人に対する要求水準だけであって,現実世界の要求水準,つまり大学院入試でクリアすべき水準は一向に下がっていない点である。ところが本人はすっかり安心してしまって,その後の入試にもあまりよくない影響が出てしまうのである。「できない」ということばは単なる自己暗示をこえて,まさに「呪いの言葉」なのである。

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November 17, 2017

大学院入試の情報収集―「確証バイアス」に気をつけよう

 大学院入試に関する相談などに対応していると,何とも安易に考えている人が多いのに驚く。しかもその安易な考えを固く信じているようなのである。インターネット上の体験談などを読む際にはぜひ,心理学で言う「ハイライト」確証バイアス」に注意してほしいものである。「確証バイアス」とは,ごく簡単に言うなら,自分の考えに合う証拠だけに目が向きがちな傾向のことである。ここでの状況に即して言うなら,安易な考えをもっている人はその安易な考えに合う証拠だけに目を向けて,しかもそれが個人の直接体験にもとづいているというので信じこんでしまうというわけである。ぼくはそのような安易な考えを捨ててほしいから相談などでもそのように対応するのだが,そうするとその安易な考えをもっている人は,ぼくがまるで自分の商売のために危機感を煽って「脅して」いると感じて敵意をむき出しにしてきたりもする。冷静な判断ができなくなっているのだからそれ以上相手にしてもしかたないし,ぼくはそこで対応を打ちきるわけだが,おそらくそういう人はぼく以外の周囲の人間にも同じように対応しているであろうから,確証バイアスが修正される可能性はなくなってしまうのである。何とも愚かな話だと思うのだが,そのような考えをもつ人はかたくなで,専門家であろうとも自分の考えに合わない人の話は聞こうとしないから,しかたないと思って放っておくことにしている。

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October 15, 2017

大学院入試を機会に役に立たない習慣をunlearnしよう!

 unlearnという英単語があるのをご存じだろうか。このあたりがぼくのもともとの専門なので少し解説しておくと,接頭辞un-には2種類あって,1つはたとえばun-importantのように形容詞につくもので,これは「重要な」→「重要でない」のように否定を表す。もう1つは動詞につくものでもとの動詞と逆の動作を表す。例としてはtie「結ぶ」→un-tie「ほどく」あたりが適切だろう。unlearnのun-も後者で,「身につける」の逆だから「忘れる」ということになるが,ただ忘れてしまうのではなく,意図的に記憶から捨てるのである。COBUILDではIf you unlearn something that you have learned, you try to forget it or ignore it, often because it is wrong or it is having a bad influence on you.「身につけた何かをunlearnするとは,それを忘れたり捨てさったりすることで,その理由は間違っていたり悪影響を及ぼしたりするからであることが多い」と定義している。英和辞典の訳語でぼくが感心したのは,『リーダーズ英和辞典』の「…の誤りに気づく」である。
 院試塾での指導においても,役に立たない習慣をunlearnしてもらおうとすることが多いのだが,特に過去の成功体験に裏づけられていると本人が思いこんでいる習慣はなかなか捨ててもらえない。ところが,その習慣が実は「足をひっぱっている」ことが実に多いのである。ぼくが特に気づくことが多いのは次の4つである。


  1. 外国語学習の基本は単語で,単語集の暗記をすれば外国語の文章がすらすらと読めるようになる

  2. 文法とは4択穴うめ問題を解くための解法集であり,読解に役立つのは頻出構文の暗記である

  3. 勉強は効率的に行うものであり,そのための「裏ワザ」を知っている人から教わるのがてっとり早い

  4. 文章は例文をもとにすればよいものが書ける


この4つだけにかぎったことではないのだが,ぼくが日々の指導で気がつくのは特にこの4つである。最初の2つはおそらく大学入試のときに英語を勉強した体験にもとづいているのであろうが,このブログの英語カテゴリで常々解説しているとおり,英単語の訳語と頻出構文の暗記による学習は実は読み間違いの主な原因なのである。単語の意味は1つ2つの訳語ではとらえきれないものだし,読解のためにほんとうに身につけなければならないのは,目の前にある英文の構成原理である文法なのである。3.と4.は研究計画書の指導などで特に感じることである。3.のようなことは直接要求されることもあるし,また,こちらとして「学問的にまっとうな」指導をしているのに対して不満を感じているのが感じられることもある。「高い金を払ったのだからチャッチャッと片づける効率的な方法を教えろ」というのであろう。しかし,学問研究などというのは,「学問に王道なし」の言葉どおり,基本に忠実に手間と時間とをかけて必要な努力を積み重ねていくしかないのである。それが「効率が悪い」ように見えて,実はもっとも「効率のよい」方法なのである。また,研究計画書などの指導をしていると「具体例を示してほしい」という希望を言ってくる人がいるが,これなどは4.のような考えかたにとらわれているのである。ぼくに言わせれば,例を意味というのは物事が本当にわかってはじめてわかるものなのである。それに,ただ例を「まねた」だけの研究計画書は薄っぺらいものになってしまうし,本当に自分のものになっていないから,面接などで「化けの皮がはがれる」のである。
 一生ものの学問を真剣に身につけたいと考えている人には,このような習慣はぜひその誤りに気づいてunlearnしてほしいものである。

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October 13, 2017

大学院入試英語の難易度

 大学院入試英語の難易度というと,単語レベルや構文の複雑さなどをまず考える人がいるが,実は「学問的な英語」を読まなければならないことから生じる難しさもあるのである。次の例は,院試塾の「大学院入試英語基礎講義」の課題1回分の全文である。


[1]There are many consequences to the type of scientific change that Kuhn (1970) has described. [2]The embracing of a paradigm means the redefinition of what is scientific and a redetermination of what is the proper study of that particular branch of science in which the paradigm prevails. [3]What may be genuine and crucial, but does not fall within the paradigm, may be declared beyond the pale of true science. [4]The risk of intellectual totalitarianism is inherent in paradigm shifts. [5]Perhaps psychiatry has benefited by the weaknesses of its paradigms; considerable diversity has been retained, and no one paradigm has ever completely effaced the others. [6]However, should the adherents of one paradigm dominate academia and/or the funding streams that nourish research, this could become possible.

題材はトーマス・クーンのパラダイム論である。学問の基盤について学んだ経験があればクーンの名前くらいは聞いたことがあるはずなのだが,院試塾のこの講座の受講生にはあまりなじみがないようで,うえの課題の訳文を作るのにかなり苦労しているようである。たとえば,院試塾の英語指導ではカタカナ語を安易に使用しないように厳しく指導するのだが,何度か出てくるparadigmはカタカナ語で「パラダイム」,paradigm shiftも「パラダイムシフト」とカタカナ語で表現しなければならず,この判断はこの分野の用語体系を把握していなければならない。また,第2~3文にかけては受講生が苦労する部分なのだが,この部分もパラダイム論の内容を理解していなければ内容を的確に把握することは難しいであろう。
 しかも,この英文は専門科目試験の一部ではなく,外国語試験の一部として出題されている点に注意しなければならない。大学院レベルでの研究に活用できる英語力を測ろうとする試験なのであるから,学問の基礎を適切に理解していることはいわば「前提」なのである。
 なお,この題材は英文そのもののレベルもかなり高く,解釈には相当の技量が必要となる。たとえば,第1文ではまず,there is A to B「AにはBがある」という構文(とは言っても,大学入試英語のいわゆる「頻出構文」ではない)を適切に解釈しなければならない。なお,この前置詞toは実はよく知られているbelong to ~のtoと同じものである。また,the type of scientific change that Kuhn (1970) has describedの部分では「the kind of ~+関係節の解釈」でも解説した理解のしかたが求められるが,これも学校英語ではあまり注目されないポイントである。

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September 20, 2017

大学院の出願書類―書くべきことの正確な見きわめ

 「研究計画書」や「志望理由書」に何を書くべきかということについての院試塾の基本的な姿勢については,これまでこのブログでも何度か述べてきた。つまり,「研究計画書」とは「研究」の「計画」を,「志望理由書」とは「志望」の「理由」を書くべきものである,というものである。これをさらに考えていくためには,「研究」とは何か,あるいは「計画」とは何か,「大学院を志望する」とはどういうことであり,その「理由」とはどのようなものであるべきか,といった点を基本に忠実に考えていけばよいのである。さらに,たとえば神戸大学経営学研究科MBAのように項目ごとに記入内容が細かく指示されている場合には,その指示に忠実に内容を組みたてていけばよいのである。
 この点で注意を要すると思われるのが,神戸大学経営学研究科MBAで出願時に提出が求められている「経歴詳細説明書」である。この書類名だけを見ると,これまでの職務経歴を履歴書のような表形式で示す代わりに文章で説明すればよいのではないかと思うかもしれない。しかし,履歴書は別途提出するので,それと同じ内容を単純に文章化すればよいのではなさそうだということは考えておくべきなのである。さらに,この書類の作成指示は「これまでの仕事上のキャリアのハイライトについて,自分はどのような努力をして,どのような結果をあげたのかを説明してください」となっている。この指示で特に重要になるのか「ハイライト」である。『新明解国語辞典』は「ハイライト」を「〔演劇・放送・スポーツなどで〕中心となる,最も興味のある部分(場面)」と説明している。ここで特に注目すべきは「最も」という最上級である。なぜなら,この意味から考えて,この書類の主題となる項目は1つに絞らなければならないと考えられるからである。ところが,院試塾の「神戸大学MBA研究計画書作成指導」の指導においても,この指示を十分に検討せず,また履歴書を別途作成・提出するようになっているという事情を考慮せず,最初はただ履歴書を文章化したものを作る人が多いのである。
 問いに適切に答えることは,学問の基本である。言葉を正確に解釈するのも学問では絶対に必要な能力である。「キャリアのハイライトを述べよ」と指示されているのにただ現在までの流れをダラダラと記述していては,この能力を疑問視されてもしかたないのである。

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September 06, 2017

来年度の放送大学大学院入試に向けて

 院試塾では,放送大学大学院修士全科生入試に対応した「放送大学大学院研究計画書ゼミ」ならびに筆記試験で英語が出題されるプログラムを対象とする「放送大学大学院トータルサポートパック」を設置している。院試塾の研究計画書関連指導の指導期間は最長6か月としており,指導申込受付開始も通常のものについては出願締切の6か月前からとしているのだが,放送大学大学院については大学院入試に対する準備不足の感が否めない人が多いので,この時期から申込受付を開始することとした。この時期から大学院での研究について徹底的に考えぬいて,少しでもよい研究計画書・志望理由書を作成するとともに,英語が出題されるプログラムの受験を考えている人には,英語の基礎力増強にも余裕をもって取りくんでいただきたい。

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August 30, 2017

大学院入試小論文指導

 院試塾では,大学院入試の筆記試験で出題される「小論文」の準備学習をサポートする「大学院入試小論文指導」を設置し,幸いそれなりの人数の方にご利用いただいている。
 この指導の特徴は何と言っても,文章論理の「構造化」を身につけることである。日本語で書くというとき,「何となく」書いてしまっている人が多いように思う。しかし,日常的に論理の訓練が十分できていない人がそれをやると,論理的な文章は書けない。実は,小論文で多くの人が直面している問題は,知識不足などではなく論理的な文章が書けていないことなのである。
 そこでこの指導では,いきなり制限字数の答案を書いて提出していただくのではなく,まずは解答内容全体の「表札」となる「トピック・センテンス」,つまり,問いに対する答えの核心内容だけを1文で明確かつ簡潔に表現したものだけを提出していただく。そしてその内容から,続いて第1段落で展開すべき内容を支持してそれを書いていただき,それがうまくできたら続いて第2段落のトピック・センテンス,第2段落全体,…という形で制限字数までを書いていっていただく。このようにして,「論理的な文章展開」のために,文章論理にしっかりとした「構造」をもたせる力を養っていくのである。
 これはちょうど,幼いころに自転車に乗る練習をしたときに,いきなり大人が乗るのと同じような自転車に乗って練習するのではなく,補助輪をつけた自転車で練習したのと同じである。ぼくに言わせれば,いきなり制限字数の答案を書く,というやりかたは,この「いきなり大人が乗るのと同じような自転車に乗って練習する」のと同じく,無茶で効果の薄いやりかたなのである。
 さらに,文章論理の構造化をきちんと身につけることができれば,小論文だけではなく研究計画書や学術論文の書きかたまで身につく。学術文書の基礎訓練を行うのだからあたりまえのことなのだが。

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August 27, 2017

一橋大学国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース秋期入試

 一橋大学国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コースの秋期入試の出願は10月2日が締切で,あと1か月と少しである。この大学院は例年説明会が1か月程度前で,今年度も9月1日である。院試塾の研究計画書関連指導は通常こちらでの指導期限が出願締切の4日前まで(上記の場合9月26日まで)で,指導の申込受付締切はその1か月前までなので,通常どおりに対応すると説明会のときにはすでに指導申込の受付は締め切っているのだが,過去の受講生でここからはじめて合格した例もあるので,今回も9月3日の指導申込受付を締め切る予定にしている。
 この大学院では筆記試験は行われず,出願において重要な位置を占めるのが「修士論文計画書」である。要約を記入する表紙を含めて全10枚の構成で,出願書類に含まれている「修士論文計画書作成のために」で,各ページに記入すべき内容が細かく指示されている。記入項目が細かく指示されているのでそれに従って記入していけばよいのだが,これまでの指導経験から言うと,書いていくうちに内容がずれてしまって,書くように求められている内容がきっちり書ける人はむしろ少ない。また,過去にした調査や呼んだ文献,これから研究のために読まなければならない文献などを記入するように指示されている箇所もあり,学問研究をある程度意識してこれまでどれだけ自主研究をしてきたかが問われる内容となっている。
 院試塾では,YouTubeのinshijukuチャンネルで動画講義「一橋大学ICS金融戦略・経営財務コース入試」を公開しているので,ぜひ参考にしていただきたい。

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July 14, 2017

大学院入試の面接

 推薦・AO入試などでのみ面接が課され,一般入試では面接がないのがふつうである大学入試とは異なり,大学院入試では面接が行われるほうがふつうである。大学院によっては「面接」ではなく「口頭試問」あるいは「口述試験」と呼んでいるところがあることからもわかるように,この面接は人物本位のものではなく(もちろん,人間が実際に対面するのであるから,失礼な態度をとればきわめて不利にはたらくだろうが),学問的なやりとりが中心となる。院試塾でも,「口頭試問・プレゼンテーション指導」を設置して,この面接の準備学習をサポートしている。ここで特に重視するのが,「問われていることの核心を1文で簡潔かつ明確に答える」ことである。この指導では指導形式を選ぶことができるが,院試塾が強くお勧めしているのが,こちらから提示した想定質問に対する回答にコメントをつけ,そのコメントの内容をもとに回答を練りなおしていく「メール指導」である。
 「問いにきちんと答える」というのは学問の基本的なスキルであり,当然ながら大学院入試の面接においてもきわめて重視されることであるのだが,多くの受講生が最初のうちは「思いつき」と「思いこみ」とで回答してくる。たとえば,想定質問のなかに「大学院での研究の方法論上の特徴を簡単に説明してください」というのがある。回答のポイントとなるのは「方法論」上の「特徴」がきちんと答えられるかどうかなのだが,単に方法を簡単に説明して終わり,という人が実に多いのである。
 また,最近では出願時に提出した研究計画書などを本人がきちんと書いているか,代筆などをしてもらって提出してはいないかを確認するための質問などもされることがあると聞く(『合格者コメント』より)。院試塾の「研究計画書作成指導」では,受講生本人が考えを深める過程を支援していくことに指導内容をとどめており,どのように尋ねられても胸をはって「自分で書いた」と言えるようにすることを目的としている。ところが,研究計画書などを「代筆」する業者などもけっこういるようだ。そのようなズルをしている受験生をあぶり出すためにも「面接」は利用されているということなのだ。

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June 29, 2017

礼節と大学院入試

 大学院入試の指導などという仕事をしていると,かなりいろいろな人の相手をすることになる。なかには礼節をわきまえない人がいて,ずいぶんと理不尽な要求をしてきたり,言いたい放題のことを言う人もいる。そういう人は大学院入試でもなぜか失敗する人が多い。いま「なぜか」と書いたが,これは実は当たり前ではないかと思っている。というのも,入試などというのは実は,「自分にはない基準」に合わせていく営みであるから,礼節とその点では共通なのである。たとえば研究計画書を書くということを考えてみても,その人の思った通りに書いた文章ではうまくいかないことが多く,こちらの示した道筋をきちんと踏まえて書くということが大切なのである。
 また,大学入試まではゲーム的感覚で「攻略」することも可能であろうが,大学院入試ではいわゆる「ペーパーテスト」の要素が少なくなるから,このような「攻略」が難しくなってくる。礼節との共通点もそれだけ増してくると言えるのではないだろうか。

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