英語

May 23, 2017

常識的判断と文法的理解

 「正しく読めるかどうかは姿勢の問題」で紹介したのと同じ日の授業であったもう1つのこと。常識的に内容をきちんと考えていれば防げる類の間違いである。


In 1957, IBM made a computer called the 610 Auto-Point. They said that it was the 'first personal computer'. But it was not like the computers that millions of people have in their homes today. It was large and expensive (55,000 dollars). It was called a personal computer, or PC, because it only needed one person to work it. The first real PCs were not made until seventeen years later. (Paul Davies, Information Technology, pp.11-2)

この部分を担当した学生は下線部を「最初の本当のPCは17世紀後半まで作られなかった」と訳した。まず,常識的に考えてこれはおかしいと気がつかなければならないだろう。文脈を見ても,1957年にIBMが「最初のパソコン」と称して売り出したコンピュータを制作したとあるのだから,下線部で述べられているのはそれよりあとのことだと気が付かなければならないのである。「訳す」ことだけに一生懸命になってしまって,「読む」ことができずにいるのだろう。
 なお,下線部のseventeen years laterは文法的に「副詞的目的格」あるいは「副詞的対格」と呼ばれるものを含んでいる。安藤貞雄『現代英文法講義』の20.5.3によると,空間・時間・程度・様式などを表す名詞句が副詞的に用いられるものをこのように言うのである。上の引用例で言うと,seventeen yearsという時間を表す名詞句がlaterを限定して副詞的に機能しているわけである。
 英文がうまく読めたときというのは,このように,内容理解と構造理解がピッタリと一致するものなのである。

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May 20, 2017

正しく読めるかどうかは姿勢の問題

 ぼくが非常勤講師として担当している神奈川大学理学部「科学技術英語Ⅰ」の授業の一幕を紹介しよう。毎回ランダムに学生を指名して訳してもらうのだが,あまりに明暗がくっきり分かれてしまった。おそらくこの違いは英語の知識量の違いではなく,「わかるように考える」姿勢ができているかどうかであろう。まずは題材となった英文を見ていただこう。


  1. The first computers (like Colossus) were too big, heavy and expensive to have in your home. But in the 1960s, technicians found a way to make computer chips with thousands of very small transistors on them. in 1971, Intel made a computer chip called the 4004, which had 2,250 transistors. Three years later, they made the 8080, a better and faster chip with 5,000 transistors. An American inventor called Ed Roberts used the Intel 8080 chip to make one of the first PCs. He called his PC the Altair 8800. (The name comes from the television programme Star Trek.) When you bought an Altair 8800, you got a box of parts that you put together at home to make your PC. It cost less than 400 dollars, and Ed Roberts sold 2,000 in the first year. The personal computer was on its way. (Paul Davies, Information Technology, p.12)

  2. In 1976, Steve Wozniak and Steve Jobs started the Apple Computer Company. In 1977, their second computer, the Apple 2, appeared. It was popular, and the company made 700,000 dollars that year. The next year, the company made 7 million! The personal computers were here to stay. IBM made their first home computer in 1981. And the Time magazine 'person of the year' for 1982 was not a person at all―it was the PC. (ibid., p.12)


1.を担当した学生は下線部を「パソコンは途中過程であった」と訳した。これは訳として意味不明で,OKを出すわけにはいかない。これに対して2.を担当した学生は下線部を「パソコンは定着した」と正しく解釈できた。辞書を引いてみると,たとえば『ジーニアス』ではon the [one's] wayの(3)として「近づいて(coming)」,(4)として「(赤ん坊が)お腹にいて」など,この下線部を解釈する上で参考になる意味をきちんと記述している。ここを訳した学生は「パソコンは途中過程であった」が日本語として意味不明であるのに,そのまま「押しきって」しまったのである。この文は上で紹介した辞書の記述なども稽えあわせると,「パソコンが誕生したのはその後間もなくのことであった」などとすべきなのである。
 2.についてはどうだろうか。やはり『ジーニアス』を見ると,be here to stayが成句で「〈事・物が〉定着している」という意味であると記述されている。おそらく,hereやstayの意味を知らなかったわけではなかろう。しかし,なぜそういう解釈になるのかと訪ねてみたところ,「とどまるためにここにあった」という表面的な訳ではおかしいと感じて,辞書を引いたのだと言う。
 ここで2人の学生が正しい解釈にたどり着けたかどうかを分けたのは,自分の考えた訳がおかしくないかどうかを吟味して,辞書をよく見てみるという姿勢が身についているかどうかなのである。

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May 17, 2017

「記述の対格」についてさらに―英文法書の記述

 「前置詞ofの省略についてさらに―名詞句の形容詞的用法」という記事で紹介した「記述的対格」という文法概念について,この記事で紹介した安藤の『現代英文法講義』よりも広く読まれていると思われる江川泰一郎『英文法解説』(改訂三版)に記述されているのを見つけたので,紹介しておきたい。§15「目的格―(1) 形容詞に相当する用法」として,「[この]名詞を目的格とするのは歴史的に見ての扱いで,一般には名詞の慣用的な用法と考えて良い」と説明している。この項目はさらに「(1) 補語に使われる例」と「(2) 名詞を修飾する例」に分かれており以前に記事で問題にしたのは主に(2)のほうである。この例として江川は以下の文を挙げている。


  • She was a young girl about your age.

  • Her eyes, a deep blue were quite impressive.

  • These are the models of various extinct animals, the size of life.


この項目の「解説」には,「記述の対格」(Accusative of Description)と呼ばれる用法で,When I was (of) your age ...のように前置詞の脱落によるものかどうかで昔の文法学者の間に論争があった」という説明がある。
 学習英文法書とはいえ,本格的な文法書にはやはりこのようなしっかりした解説がきちんと載っているのである。

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May 11, 2017

直訳しても意味不明(3)―mental revolutionとは?

 これまでにも「直訳しても意味不明―『社会的大災害』は何の訳?」や「直訳しても意味不明(2)―『一般的露出』は何の訳?」で,直訳で考えても意味がうまくつかめない表現の意味について考えてきた。また,mentalの意味についても,たとえば「内容をきちんと考える英文読解―mental surveyとはどういうことか?」などで考えている。今回はこれらのポイントをふまえつつ,次の引用例の下線部の意味を考えてみてほしい。


Money was created many times in many places. Its development required no technological breakthroughs―it was a purely mental revolution. It involved the creation of a new inter-subjective reality that exists solely in people's shared imagination. (Yuval Noah Harari, Sapiens: A Brief History of Humankind, Amazon Kindle版位置No.2734)

これまでにも解説しているとおり,mentalは「頭のなかの」ととらえるのが適切である。これはたとえば,LDOCEのrelating to the mind and thinking, or happening only in the mindというmentalの定義や,your thoughts or your ability to think, feel, and imagine thingsというmindの定義を参照してもこのことはわかる。また,「革命」という訳語でとらえがちなrevolutionについても,たとえばCOBUILDのA revolution in a particular area of human activity is an important change in that area.という定義を見れば,「大きな変化」ととらえることができるのがわかる。これらを組みあわせて考えると,上の引用例の下線部は「考えかたを一変させること」といった形で柔軟にわかりやすくとらえることができるのである。

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May 07, 2017

前置詞ofの省略についてさらに―名詞句の形容詞的用法

 昨日の記事「『おかしさ』を感じとれることの重要性―前置詞ofの省略では,「<of+名詞>の名詞が年齢・大小・色彩などを表す名詞の場合は,ofはふつう省略される」という現象について紹介したが,この形についてさらに調べてみたので,その結果を紹介しておきたい。
 まず,安藤貞雄『現代英文法講義』の§20.1.2では名詞句の「形容詞的用法」として「名詞句は,次の二つの場合,形容詞的に用いられる」と解説し,そのうち[B]叙述的用法の3番目として「名詞句のあとに置かれて,これを修飾する」というのがあって,用例としてShe extended a hand the color of cream.「彼女はクリーム色の手をさしのべた」とI want to buy a car this size.「これくらいの大きさの車を買いたい」が挙がっている。さらに相互参照として§20.5.3を見るように指示があり,ここではOnionsの「記述的対格」(accusative of description)という用語が紹介され,「形状・色彩・年齢・価格・職業などを表す名詞で,形容詞的に用いられる。通例,ofを補うことができる」として,Why can't you be like other girls your age?「なぜ君は,君の年ごろのほかの女の子みたいになれないのかね」という用例などが挙がっている。
 また,英語の専門家が英語に関する疑問を手軽に解決するために必ずと言ってよいほど参照しているMichael SwanのPractical English Usageではageの項で「be + ... age」として,Note the structure be + ... age (without a preposition)と説明を加えており,When I was your age I was working. (not When I was at your age / The two boys are the same age. / She's the same age as me.などの用例が挙がっている。

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May 06, 2017

「おかしさ」を感じとれることの重要性―前置詞ofの省略

 原則に照らして何か「おかしな」ことが起こっていると感じて追究してみるという姿勢は,学問的にきわめて大切だと思う。英文法についてもそれは言えることだ。次の引用例の下線部ではいったいどんな「おかしな」ことが起こっているだろうか。


I don't know about you, but I find these calculated dates astonishingly recent. What's more, the conclusions don't change much if you assume a larger population. Taking a model population the size of Britain's today, 60 million, we still need to go back only 23 generations to reach Chang One and our youngest universal ancestor. (Richard Dawkins, The Ancestor's Tale: A Pilgrimage to the Dawn of Life, Amazon Kindle版位置No.1129-36)

下線部ではa model populationとthe size of Britain's todayという2つの名詞句が,O+OやO+Cではないのに連続している。意味を考えてみると,「今日のイギリスと同じくらいのモデル人口」となりそうで,つまりthe size of Britain's todayがa model populationを修飾しているのではないかと思えてくる。
 この解釈の「裏」をとってみることにしよう。文法書で「前置詞の省略」について調べてみると,たとえば『ロイヤル英文法』の§321「前置詞の省略」(2)は「<of+名詞>の形で形容詞句となる場合」とあり,「<of+名詞>の名詞が年齢・大小・色彩などを表す名詞の場合は,ofはふつう省略される」とあって,The children are (of) the same age.「その子たちは同い年である」やThe suitcase is (of) the same size of that.「このスーツケースはあれと同じ大きさである」といった例文が挙がっている。例文はいずれもof+名詞の形が補語になっているが,補語に限定されるという記述はないので,上の引用例の下線部も同じように考えて,a model population of the same size of Britain's todayのofが省略されていると考えることができるのである。

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May 02, 2017

reallyの意味と否定の作用域

 否定の解釈が難しい要因の1つに「否定の作用域」の問題がある。否定の作用域とは,否定が及ぶ範囲のことで,通常は否定語から文末方向である。これだけであれば話は単純なのだが,実はさまざまな語がこの作用域に入っているかどうかで意味が違ってくるからやっかいだ。たとえばreallyがこれに当たる。たとえば『ウィズダム英和辞典』では,以下のように説明している。


  • I really don't know.本当に知りません(reallyの位置により文意が変わる)

  • I don't really know.あまりよくわからないんですよ


実は上記のような違いは,reallyが否定の作用域に入っているかどうかから生じてくるのである。I really don't know.においては,reallyが否定の作用域の外にあって,つまりは否定の影響を受けない。だから,「本当に[知りません]]という解釈になるのに対して,I don't really know.ではreallyが否定の作用域に入っているので[[あまりよくわから]ないんですよ]という解釈になるわけである。
 これをふまえてちょっとした練習問題に挑戦してみてほしい。次のうち,「彼のことが大嫌い」という意味になるのはどちらだろうか。

  1. I really don't like him.

  2. I don't really like him.


否定の意味をreallyが強めるのが「彼のことが大嫌い」という解釈であるから,reallyは否定の作用域の外になければならない。つまり,この意味になるのは1.のほうなのである。

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暗記主義の貧困―what we callは「いわゆる」か?

 学校英文法を学んだことのある人なら,関係代名詞のところでwhat we [you / they] call ~は「いわゆる」という意味の慣用表現であるというのを学習した記憶がある人が多いであろう。しかし,このように覚えてしまうのではなく,この表現が[S]we [you / they] [V]call [O]what [C]から導き出されたものだという理解のしかたをしていれば,文脈に応じて柔軟に対処することが可能なのである。以下の引用例で確認してほしい。


There were tides in the new earth, long before there was an ocean. In response to the pull of the sun the molten liquids of the earth's whole surface rose in tides that rolled unhindered around the globe and only gradually slackened and diminished as the earthly shell cooled, congealed, and hardened. Those who believe that the moon is a child of Earth say that during an early stage of the earth's development something happened that caused this rolling, viscid tide to gather speed and momentum and to rise to unimaginable heights. Apparently the force that created these greatest tides the earth has ever known was the force of resonance, for at this time the period of the solar tides had come to approach, then equal, the period of the free oscillation of the liquid earth. And so every sun tide was given increased momentum by the push of the earth's oscillation, and each of the twice-daily tides was larger than the one before it. Physicists have calculated that, after 500 years of such monstrous, steadily increasing tides, those on the side toward the sun become too high for stability, and a great wave was torn away and hurled into space. But immediately, of course, the newly created satellite became subject to physical laws that sent ti spinning in an orbit of its own about the earth. This is what we call moon. (Rachel Carson, The Sea around Us, Amazon Kindle版位置No.166-74)

この引用例では,what we callを「いわゆる」と訳すのには違和感があるであろう。callの現在形に注目して「今~と呼ばれているもの」とするのが適切である。これは上で述べたこの表現のもとの形に注目すれば簡単に導き出せる解釈なのである。

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April 18, 2017

文脈から英単語の意味を推測する「技」

 「未知の英単語の意味は文脈から推測しろ」ということがよく言われる。また,このようにして推測した後で辞書で意味を確かめた単語は記憶にも残りやすい。自分の頭で考えたことがらのほうが,ただ与えられた情報よりも記憶に残りやすいというのは,認知心理学も教えているところだ。さらに,意味の推測がある程度ついていれば,英和辞典でなく英英辞典で調べてもピンとくるだろうから,英語力の向上により結びつきやすくなる。実例で解説してみよう。次の引用例の下線部のdearthはどのような意味であろうか。


However, as political scientists Cathy J. Cohen and Michael C. Dawson have pointed out, these informal networks are not available to everyone. African Americans who live in clusters of poverty in American inner cities suffer not only from [A]economic deprivation but also from a dearth of political information and opportunity. (Robert Putnam, Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community, Amazon Kindle版位置No.6199)

対象の下線部とnot only A but also Bで対比されているのが下線部[A]であるから,対象のdearthと下線部[A]のdeprivationは類義関係にあるのだろうとすぐに推測することができる。この理解をふまえて英英辞典を引くと,たとえばCOBUILDには,If there is a dearth of something, there is not enough of it.とあり,たしかにdeprivationと同様の意味であると納得できるわけである。このように自分で推測して意味をたしかめた語は,ただ単語集で見ただけの単語よりも記憶に残りやすいであろう。このような地道な作業こそが英単語の学習の「王道」なのである。

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April 03, 2017

項構造と形容詞・副詞の解釈

 「項構造」とは,言語学において,動詞が要求する要素の形式と意味の構造のことを言う。たとえば動詞observeは主語として動作主を,目的語として対象を表す名詞をとる,というのが動詞observeの項構造なのである。この動詞observeが名詞や形容詞になると,動作主はby句や所有格,対象はof句で導かれるのがふつうであるが,前置詞句は機能上形容詞・副詞に相当するので,これらの句が形容詞・副詞として実現されることもある。このような例をいっしょに見ていこう。


  1. Churches and other religious organizations have a unique importance in American civic society. America is one of the most religiously observant countries in the contemporary world. (Robert Putnam, Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community, Amazon Kindle版位置No.996)

  2. American churches over the centuries have been incredibly robust social institutions. Tocqueville himself commented at length on Americans' religiosity. Religious historian Phillip Hammond observes that "ever since the nation's founding, a higher and higher proportion of Americans have affiliated with a church or synagogue―right through the 1950s. Although most often we think of colonists as a deeply religious people, one systematic study of the history of religious observance in America estimates that the rate of formal religious adherence grew steadily from 17 percent in 1776 to 62 percent in 1980. (Robert Putnam, Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community, Amazon Kindle版位置No.996-1003)


 引用例1.のreligiously observantは[V]observe [O]religionを形容詞化したもので,religiouslyは×「宗教的に」ではなく○「宗教を」ととらえるべきなのである。引用例2.のreligious observanceも同様で,やはりこのreligiousも×「宗教的な」ではなく○「宗教を」ととらえるのが適切なのである。つまり,どちらの場合にも,形容詞・副詞を派生元の名詞に戻したうえで,それらが修飾している形容詞や名詞を派生元の動詞に戻してその項構造と関連づけて解釈する必要があるのだ。

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