英語

December 05, 2017

否定表現に続くbegin to Vの語義

 begin to Vと言えば「Vしはじめる」という意味で知らない人はいないと思われるが,実は否定表現に続くと特別な意味を表す。たとえば『ルミナス英和辞典』では「[否定文で]とても…しそうにない,…どころではない」という意味であると説明している。


  1. This is it, the human brain, and it might not look like it but it's the most complex physical structure we know of anywhere in the universe. There are over 80 billion neurons in the average human brain. That's comparable to the number of stars in the galaxy. That doesn't even begin to describe its complexity. (Human Universe, "Apeman―Spaceman")

  2. This work has taken me through many of the cities of the United States and across much of the rest of the world. It has confirmed my earliest intuitions: that how people construe the time of their lives comprises a world of diversity. There are drastic differences on every level: from culture to culture, city to city, and from neighbor to neighbor. And most of all, I have learned, the time on the clock only begins to tell the story. (Robert Levine, A Geography of Time: On Tempo, Culture, and the Pace of Life, Amazon Kindle版位置No.188)


この2つの例は上で挙げた『ルミナス英和辞典』の訳語では理解しにくいかもしれないが,たとえばLDOCEではcan't begin to understand/imagine etcとして,used to emphasize how difficult something is to understandと説明している。これにそって解釈すると,1.の例は「この数字は脳の複雑さを記述するにはとうていおよばない」という意味であり,2.の例は「時計からわかる時間からは真相がかろうじてわかるだけなのである」という意味だと考えることができる。
 なお,2.の例については,onlyが否定語であるという認定が必要となるが,この点についてはたとえばLittle did I dream that such a thing would happen.(『ロイヤル英文法』)のような否定語を文頭に置いた場合の倒置がonlyの場合にも起こって,たとえばOnly on one point do I agree with you.(ibid.)のようになることからもわかる。なお,この点について『ロイヤル英文法』は「onlyも意味上は否定語に近いので文頭に置かれると倒置になる」(§379(3))と説明している。またこの点はたとえば,onlyに相当するフランス語の表現がne ... queという否定表現であることや,onlyを日本語に訳す場合に「〜しかない」とする場合があることも考えあわせるとうまく理解できるであろう。

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November 28, 2017

変化の意味を表すmore or less

 more or lessを見ると機械的に「多かれ少なかれ」と訳して安心してしまう悪い癖がついている人が多い。辞書をの記述を丹念に読むと,慣用表現としてのmore or lessはむしろ,「だいたい,おおよそ」ないしは「かなり」と解釈したほうが良い場合が多いことがわかるのだが,そもそも,辞書の記述を丹念に読む習慣がきちんと身についている人は,意味をよく考えずに「多かれ少なかれ」と訳したりはしない。
 今回とりあげる実例はさらに精密な読みが必要なものである。というのも,これは実は慣用表現ではないからである。more or lessが文字どおりに「多くなったり少なくなったりする」という変化を表しているのである。まずは実例を見てみよう。


This four-circuit human attentional system evolved over tens of thousands of years―distinct brain networks that become more or less active depending on the situation―and it now lies at the center of our ability to organize information. (Daniel Levitin, The Organized Mind: Thinking Straight in the Age of Information Overload, Amazon Kindle版位置No.1056)

depending on the situationとの関連でとらえると,下線部のmore or lessは「状況によって活発になったりそうでなくなったりする」という意味であるとわかるのである。文脈に即して内容を正確に読みとろうという姿勢が身についている人だけがこのような理解にたどりつけるのである。

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November 25, 2017

a(n)+数量・種類の名詞+ofが数量形容詞に相当する実例

 これまでにこのブログで何度か,たとえばa number of 〜 / a variety of 〜のように,a(n)+数量・種類の名詞+ofが数量形容詞に相当する場合があることをとりあげてきた。これらの例の場合にはnumber / varietyなどの辞書の記述を丹念に検討すればこの解釈にはたどり着けるのだが,場合によっては辞書に適切な記述がない場合もある。そのような実例を紹介しておこう。


The books on innovation yielded [A]a harvest of examples from science, inventions, business, and management. I searched through transcripts of interviews I had conducted with military decision makers. Books and articles about financial investment in the wake of the 2007-2008 financial collapse yielded [B]many more examples, as did stories about medical discoveries. (Gary Klein, Seeing What Others Don't: The Remarkable Ways We Gain Insights, Amazon Kindle版位置No.558)

下線部[A]のa harvest of examplesは,下線部[B]のmany more examplesと対比して考えると,「大量の例」という意味だと判断できる。つまり,a harvest ofがa(n)+数量・種類の名詞;ofという形であり,many / a lot ofなどに対応すると考えられるわけである。
 なお,いくつかの辞書を引いてみたが,私が見たかぎりではa harvest of 〜がmany / a lot of 〜に相当する意味を表すという記述は見あたらなかった。

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November 24, 2017

語義を文脈から具体的に考える方法

 多義語の解釈は初学者が迷うポイントで,辞書を引いてもたくさんの意味に圧倒されてしまいがちである。しかし,文脈から語義を適切に絞りこむ訓練ができていれば,それほどたいへんなことではない。今回はその具体的な方法を実例で解説しよう。次の引用例の下線部[A]のclosureの意味を考えてみてほしい。


Insights are unique in some other ways. When they do appear, they are coherent and unambiguous. They don't come as part of a set of possible answers. When we have the insight, we think, "Oh yes, that's it." [A]We feel a sense of closure. This sense of closure produces a feeling of confidence in the insight. Wallas claimed that the flash of illumination results in a feeling of certainty. We aren't picking an idea that seems better than others. [B]Instead, we're struck that this is the answer, the happy idea. (Gary Klein, Seeing What Others Don't: The Remarkable Ways We Gain Insights, Amazon Kindle版位置No.477)

closureを辞書で引いてみると,たとえば『プログレッシブ英和中辞典』には以下のような多様な意味が載っている。

  1. 閉鎖,閉店,廃業

  2. ふた,キャップ,ファスナー

  3. 終了,終結

  4. 心の整理,気持ちの区切り


上の引用例では下線部[B]の内容との関連で考えると,4.の意味で解釈するのが適切だとわかるであろう。「これが答えでまちがいがない」という気持ちの区切りがつく,というわけだ。

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名詞intimationの意味―名詞化との関連で具体的に考える

 名詞intimationを辞書で引くと,たとえば『ルミナス英和辞典』では,「ほのめかし,暗示」などとなっているが,果たしてこれでしっかりと意味が把握できるだろうか。次の2つの例で考えてみてほしい。


  1. Wallas claimed that people could sometimes sense that an insight was brewing in their minds. The insight starts to make its appearance in fringe consciousness, giving people an intimation that the flash of illumination is nearby. (Gary Klein, Seeing What Others Don't: The Remarkable Ways We Gain Insights, Amazon Kindle版位置No.388)

  2. Diseases have a wide variety of ways by which they first make their presence known. Sometimes they lurk unknowable within us for weeks or months―even years―daily extending their malign domain until some vague puff of minimal perception brings subtle warning, perhaps only an intimation, that something may not be quite right. (「メディカル大学院英語ゼミ」課題文)


いずれもan intimation that S+Vという形で用いられている。名詞化の解釈の基本との関連で考えると,まず,an intimationと可算名詞として用いられていることから,このintimationは結果読みであり,つまり「~するもの」という意味でとらえるのが適切であると判断できる。また,後続のthat節はもとの動詞が要求していたthat節を継承したものではないかという点にも思い至るであろう。このように考えて辞書を引くと,動詞intimateは「間接的に知らせる」という意味であることがわかるから,an intimation that S+Vは「~であることを間接的に知らせるもの」と解釈できることがわかって,2.の例のsubtle warningとの同格関係もしっかりと納得できるのである。
 なお,たとえば『プログレッシブ英和中辞典』のように,名詞intimationについて,動詞intimateの名詞形であることだけを示している辞書もある。上で解説したような名詞化の解釈の基本がきちんと身についている人であれば,この記述のしかたのほうが親切であるとも言えるのではなかろうか。

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November 23, 2017

statisticianの2とおりの解釈―意味・内容を正確に吟味する

 He is a good dancer.を「かれは上手な踊り手である」のように訳さないようにとぼくは常々指導している。なぜならこの文はHe dances well.を名詞中心表現にしたものであって,dancerは日本語の「踊り子」「踊り手」のように,踊ることを生業にしている人という意味を表すとはかぎらないからである。次の例で考えてみると,このことがよくわかるであろう。


We prepared a survey that included realistic scenarios of statistical issues that arise in research. Amos collected the responses of a group of expert participants in a meeting of the Society of Mathematical Psychology, including the authors of two statistical textbooks. As expected, we found that our expert colleagues, like us, greatly exaggerated the likelihood that the original result of an experiment would be successfully replicated even with a small sample. They also gave very poor advice to a fictitious graduate student about the number of observations she needed to collect. Even [A]statisticians were not good intuitive [B]statisticians. (Daniel Kahneman, Thinking, Fast and Slow, Amazon Kindle版位置No.63-8)

上の引用例の最後の文を,「統計学者でさえもよい直観的統計学者ではなかったのである」などと解釈してもまったく意味不明である。下線部[A]のstatisticianは「統計を専門的に扱う人」,下線部[B]は「統計をきちんと扱える人」という意味なのであって,これをふまえると「統計を専門的に扱う統計学者でさえも,直観的に考えた場合に統計をきちんと扱えるとはかぎらなかったのである」と解釈できるのである。直訳では見えなかった意味が,意味・内容を正確に吟味しようとすると見えてくるのである。

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クジラの構文―さらに実例を

 大学入試英語で「クジラの構文」と呼ばれている構文について,これまで何度かこのブログでもとりあげてきた。今回はさらに実例を追加で紹介しておこう。今回紹介するのはA whale is not a fish any more than a horse is.のパターンである。


Much of the discussion in this book is about biases of intuition. However, the focus on error does not denigrate human intelligence, any more than the attention to diseases in medical texts denies good health. (Daniel Kahneman, Thinking, Fast and Slow, Amazon Kindle版位置No.41)

下線部をすらすらと日本語に訳せるだろうか。きちんとわかっていればできるはずだ。

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英文読解と背景知識

 英文を読んでいると,意外な知識が役に立つことがある。たとえば以下の引用例のSaraswatiが何を指すかわかるだろうか。


Most Hindus, however, are not Sadhus. They are sunk deep in the morass of mundane concerns, where Atman is not much help. For assistance in such matters, Hindus approach the gods with their partial powers. Precisely because their powers are partial rather than all-encompassing, gods such as Ganesha, Lakshmi and Saraswati have interests and biases. (Yuval Noah Harari, Sapiens: A Brief History of Humankind, Amazon Kindle版位置No.3310)

下線部のSaraswatiは実は日本でもよく知られている存在である。仏教信仰の知識がある人は,弁財天の真言が「オン ソラソバテイエイ ソワカ」であることに思いいたるであろう。この「ソラソバテイエイ」こそが,Saraswatiに通じるのである。
 なお,辞書でこの情報に到達しようとすると,読解背景知識が豊富に収録されている『リーダーズ・プラス』を見る必要がある。この辞書を見ると,Sarasvati / -watiの項に「サラスヴァティー《古代インドの神話でBrahmaの神妃;古代Sarasvati川が神格化されたもので,川の女神として汚れをはらい富をもたらす;のちにことばの女神 Vacと同一視され,学問・芸術をつかさどる神とされた;仏教では大弁天・弁才天・妙音天などと訳される》」とあって,いわゆる弁財天のことであるとわかるのである。

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November 20, 2017

名詞中心表現を展開して解釈するとわかりやすくなる

 文(命題)を中心に記述を展開する傾向のある日本語とは違って,英語は名詞を中心に記述を展開する。このような名詞中心表現を直訳していると,日本語としては読みづらく,内容のわかりにくい訳文になってしまう。そのような訳文を書く癖がついている人は,内容が理解できていなくても「訳せているから大丈夫だ」という間違った安心感をもってしまう。きちんと内容を読みとるためには,名詞中心表現を文(命題)に展開して訳す習慣をつけるのが好ましいのである。そしてこれは,単なる翻訳のテクニックではないのである。そのような理解が適切な実例をいっしょに見ていくことにしよう。


Everyone has some awareness of the limited capacity of attention, and our social behavior makes allowances for these limitations. (Daniel Kahneman, Thiking, Fast and Slow, Amazon Kindle版位置No.318)

下線部を直訳して,「誰もが注意の制限された能力に対するある程度の意識を持っている」としても内容はよくわからない。まず,下線部のhas ... awareness of 〜はbe aware that 〜と展開してとらえるとわかりやすくなる。つまり,has some awareness of 〜を「ある程度は知っている」ととらえるわけである。続いて,the limited capacity of attentionは名詞中心表現を解いてattention has a limited capacityと読みとくとわかりやすい。この読みでいくとこの部分の訳は「注意力には限りがある」となるわけである。このように読むと下線部全体の意味は「注意力には限りがあるのを誰もがある程度走っている」となって,最初の直訳よりはずいぶんとわかりやすくなるのである。

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固定した語義に依存しない読解―investの意味は「投資する」だけではない

 単語集にあがっているような固定した語義だけで英文を解釈しようとすることの問題点については,すでにこのブログでも何度か解説しているが,この学習法の人気は根強いようで,この方法からなかなか抜けだせない人も多いようである。今回も実例を挙げて,この方法に頼っていては意味をとらえきれない場合があることを実証しよう。


For all its material advantages, the sedentary life has left us edgy, unfulfilled. Even after 400 generations in villages and cities, we haven't forgotten. The open road still softly calls, like a nearly forgotten song of childhood. We invest far-off places with a certain romance. (Carl Sagan, Pale Blue Dot: A Vision of the Human Future in Space, Amazon Kindle版位置No.129)

investという動詞には「投資する」という訳語を対応させて覚えている人が多いであろうが,文脈から考えても,このinvestはそのような意味ではない。そこで,用法に注意しながら辞書を引いてみると,たとえば『ルミナス英和辞典』には「(性質などを)〈…〉に持たせる」という意味があることがわかる。ここから考えを進めると,上の引用例の下線部は「遠く離れたところに夢のような場所があるのではないかと想像する」という意味ではないかと考えることができるのである。

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