英語

February 18, 2018

文脈に即した語義理解―辞書的解釈を超えて

 readinessを英和辞典で引くと,「進んで~すること」のような語義が見つかる。しかし,この訳語を見ると,する側の積極性が読みとれるわけであるが,次の引用例のような場合,そのような解釈ははたして適切であろうか。


"Overreaction" also comes from the experience that people have had with loss in the past. When old losses haven't been adequately dealt with, a sort of transition deficit is created―a readiness to grieve that needs only a new ending to set it off. (William Bridges, Managing Transitions: Making the Most of Change, Amazon Kindle版位置No.711)

適切な解釈に到達するためには,この名詞化のもとの形であるready to Vに戻って考える必要があるだろう。この形に戻って英和辞典を引いてみると,readinessだけでとらえていたときとは違う理解のしかたが示されているのに気がつく。たとえば『ルミナス英和辞典』の記述をbe ready to Vという形に注目して検討してみると,「今にも…しようとして; すぐ…しがちで」という語義が見つかる。これをもとにreadiness to Vの意味を考えてみると,「すぐにVしがちであること」という理解にたどりつけるであろう。この理解をもとに,上の引用例の下線部も,「すぐに深く悲しんでしまう心の状態」のように理解できるであろう。

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February 17, 2018

前置詞の意味解釈―比喩的拡張を手がかりに

 英語の前置詞の意味は,空間の意味が基本で,そこからさまざまな意味が「比喩的拡張」によって派生している。たとえば,以前「『回避』の意味を表すaround」で説明したとおり,辞書で「回避」の意味とされているaroundの意味は,空間的意味を基本にしてイメージを広げるとすんなりと理解できる。今回もそのような実例を紹介しよう。


Depression―feelings of being down, flat, dead; feelings of hopelessness; being tired all the time. Like sadness and anger, depression is hard to be around. You can't make it go away, however, People need to go through it, not around it. (William Bridges, Managing Transitions: Making the Most of Change, Amazon Kindle版位置No.774)

下線部のaroundはまさに「回避」の意味である。throughはどうであろうか。このthroughを辞書ではよく「経験」を表すなどと解説しているのだが,はたしてなぜそのようになるのであろうか。throughの基本的意味は「貫通」,つまりある対象物を突きぬけて通っている状況を表すものである。トンネルなどをイメージするとわかりやすいだろう。「経験」とはすなわち,このトンネルを通り抜けて反対側に出ることだとイメージされるので,同じ前置詞throughで表すわけである。
 なお,このような比喩的拡張について詳しく知りたいという人は,田中茂範著『表現英文法』に豊富な解説があるので,一度ご覧になることをお勧めしたい。

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February 15, 2018

外国語の文章がきちんと読めていないとはどういうことか

 外国語の読解能力のない人が外国語文を「読む」というとき,自分にわかる部分だけを都合よくつなげただけ,ということが実に多い。いうまでもなく,そのような読みかたでは内容がきちんとわかるわけはないのである。ちょうど下の引用で述べられているような状況になっているのではないだろうか。


 ともあれ,私はなにぶんサトってしまったものだから,あらゆることに怠惰になり,目も両方あけているのはムダなので片一方だけ開けていた。チーフ・オフィサーがドイツの漁業調査船アントン・ドルン号の説明書を持ってきて訳してくれという。私は,何を隠そう自分はサトリをひらいたから,さようなくだらぬことは今後一切しないと断った。
「どうもサトリなんぞひらかれて弱ったものだなあ」と彼がしきりにぼやくので,私はついそれを受取って開いてみると,どうしてこれが難物である。三位電流とかなんとか特殊用語にみちみちているうえ,船の上甲板には絞首台(ガルゲン)なんぞがついている。いくらなんでも船に絞首台なんかあっては変だからどうせ専門用語なのだろうが,そんなものをいちいち調べていては大変である。私は「いいですか,完全な直訳をするからあとで勝手に直しなさいよ」と言っておいて,暗室(ドゥンケルチンメル)なんぞも陰鬱な部屋と訳し,エンジン・ルームの面倒な機械などはすべてとばしてしまった。この船はすぐれた調査船で,さまざまな化学実験室をそなえ,医者にもちゃんと助手がついているし四ベッドを備えた病室まである。しかし私の訳によれば,ひとかけらの推進装置も有さず絞首台やら薄暗き部屋にみちみちているので,さすがドイツの誇る最新調査船アントン・ドルン号もあわれ幽霊船のごとくなってしまった。(北杜夫『どくとるマンボウ航海記』Amazon Kindle版位置No.1936-45)

 いい加減に読んで訳すと,このように原文の意味とはずいぶんずれた解釈になってしまうのである。

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February 12, 2018

resourcesの語義―「資源」と決めつけない!

 これまでにこのブログで何度か,resourceという語の語義を検討してきた。それは,この語が定訳の「資源」ではとらえきれない意味をもっているからだ。今回もこのようなresourceの実例を検討していこう。


The general manager of the service unit brought in a service consultant, who studied the situation and recommended that the unit be reorganized into teams of people drawn from all three of the levels. (This reorganization is what in the last chapter I called the change.) A customer would be assigned to a team, and the team would have the collective responsibility of solving the customer's problem. Each team would have a coordinator responsible for steering the customer through the system of resources. Everyone agreed: the change ought to solve the problem. (William Bridges, Managing Transitions: Making the Most of Change, Amazon Kindle版位置No.426)

下線部のresourcesを「資源」と解釈してみたところで,あまりピンとはこないのではないだろうか。英英辞典の定義を見てみよう。COBUILDでresourceを引くと,The resources of an organization or person are the materials, money, and other things that they have and can use in order to function properly.という語義が最初に挙がっている。この語義と上の引用例の内容とを考えあわせると,下線部のresourcesは「解決手段」といった意味であると判断することができるであろう。『リーダーズ英和辞典』には「方策」といった訳語が挙がっているが,これに近いと考えてよいであろう。

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February 06, 2018

知識を総動員する英文読解

 英文を正確に読むためには,表現や構文などの知識を総動員して取りかかる必要がある。そのような実例を紹介し,読みかたを確認していこう。


[A]Second thoughts can turn one's thirties into a difficult time. It is often the first time of transition after leaving home when a person feels [B]real doubt about the future. It can also be a very lonely time, because the very people that one would normally talk to about personal problems may be the people that one is [C]having second thoughts about. (William Bridges, Transitions: Making Sense of Life's Changes, Amazon Kindle版位置No.567)

下線部[A]の文はどのような意味を表しているのであろうか。単に直訳して,「2番目の思考が30代を困難な時期に変える」では意味不明である。正確な読解の中心となるのは,second thoughtsがこれで慣用表現になっている点を正確に見ぬくことができるかどうかである。これに気づくためには,下線部[C]のhave second thoughts about ~に注目するのがよい。これを辞書で成句として調べてみると,たとえば『ルミナス英和辞典』では,「決心がつかない,二の足を踏む」という意味であるとの記述がある。また,これとの関連で目につくのが下線部[B]のreal doubtではなかろうか。この流れから,下線部[A]の文は,「決心がつかないからこそ30代は困難な時期になりえるのだ」という意味であると理解できるのである。

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January 17, 2018

語義推測の技法―言い換えに注目する

 単語はただ訳語をやみくもに暗記するのではなく,文脈などから推測したうえで辞書(可能であれば英英辞典)を引いて確認するようにしたほうが定着しやすいというのが,ぼくの持論である。今回は特に言い換えに注目すると有効な実例を紹介しよう。


De Landa began the book with a brilliant interpretative twist. Imagine, he suggested, a work of history written sometime in the future by some form of artificial intelligence, mapping out the history of the preceding millenium. 'We could imagine,' De Landa argued, 'that such a robot historian would write a different kind of history than would its human counterpart.' Events that loom large in human accounts―the European conquest of the Americas, the fall of the Roman Empire, the Magna Carta―would be footnotes from the robot's perspective. Other events that seem marginal to traditional history―the toy automatons that pretended to play chess in the eighteenth century, the Jacquard loom that inspired the punch cards of early computing―would be [A]watershed moments to the robot historian, [B]turning points that trace a direct line to the present. (Steven Johnson, How We Got to Now: Six Innovations that Made the Modern World, Amazon Kindle版位置No.80)

下線部[A]のwatershed momentsとはどのような意味であろうか。実はこの意味は下線部[B]でturning pointsと言い換えられている点に注目すれば,「分かれ目となるような瞬間」という意味であろうと推測できる。そして実際,英英辞典でwatershedを引いてみると,たとえぱCOBUILDでは,If something such as an event is a watershed in the history or development of something, it is very important because it represents the beginning of a new stage in it.となっていて,この推測が正しいことが裏づけられる。さらに英和辞典を引いてたしかめると,「転機,分岐点」といった訳語が見つかるのである。

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January 12, 2018

名詞中心表現―ほどいて訳すとわかりやすい

 「名詞中心表現の解釈―修飾語+名詞を文の形にほどいて理解する」という記事でも解説したとおり,英語の修飾語+名詞という形の名詞中心表現はそのまま直訳するのではなく文の形に展開してから訳すとわかりやすくなる。このような実例をさらに紹介しよう。なお,今回の実例では名詞中心表現のすぐあとにもととなるV+Oの形も出てくるので,あわせて注目してほしい。


 John the Baptizer appeared in the wild, preaching a baptism of life-change that leads to forgiveness of sins. People thronged to him from Judea and Jerusalem and, as they confessed their sins, were baptized by him in the Jordan River into [A]a changed life. John wore a camel-hair habit, tied at the waist with a leather belt. He ate locusts and wild field honey.
 As he preached he said, "The real action comes next: The star in this drama, to whom I'm a mere stagehand, will [B]change your life. (Eugene Peterson, The Message: The Bible in Contemporary Language, Amazon Kindle版位置No.40907)

下線部[A]のa changed lifeは,下線部[B]の[V]change [O]your lifeを名詞中心表現に転換したものと考えることができ,「悔い改めること」と解釈するのが妥当なのである。

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January 05, 2018

名詞化形と所有格の解釈

 名詞化形につく所有格の解釈の基本をまずは確認しておこう。


  1. the enemy's destruction of the city←[S]The enemy [V]destroyed [O]the city.

  2. the city's destruction by the enemy←[S]The city [V]was destroyed by the enemy.


1.は能動文を名詞化したもので,2.は受動文を名詞化したものである。いずれの場合でも,もとの文の主語が所有格で表現されている。ところが,次の引用例の下線部の所有格theirはどうであろうか。

Although I have assumed that the specific mechanism that killed Horace Giddens was ventricular fibrillation, it may have been acute pulmonary edema, or the terminal condition called cardiogenic shock, in which the left ventricle is just too weak to maintain a blood pressure high enough to sustain life. Among those of us who will succumb to ischemic heart disease, these three events will account for the vast majority of deaths. They can occur in sleep and they can happen so rapidly that only minutes pass before the moment of death. If medical help is at hand, the worst of their accompaniment can be lessened by morphine or other narcotics. (Sherwin Nuland, How We Die: Reflections on Life's Final Chapter, Amazon Kindle版位置Np]o.789-97)

この下線部は言い換えれば[S]what [V]accompany [O]themで,つまり所有格theirは能動文の目的語に相当している。能動文の目的語は受動文では主語になるわけだから,もとの形と思われるものをあえて受動態を用いて言い表すならばwhat they are accompanied byとなるであろう。このように考えると,their accompanimentは「この3つのできごとに付随するもの[症状]」と解釈できるわけである。

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January 03, 2018

基本的な語法知識の応用―awareness of A as B

 think of A as Bという語法は大学入試のために英語を勉強したことのある人なら知っているはずのものであるが,この形を応用するとよくわかる形がある。次の引用例の下線部の意味を考えてみてほしい。


Next, using the same Canvas tool, team members collectively model the work they do as a group. This is usually an eye-opener. It visually clarifies the team's purpose and causes participants to recognize other groups they help at work, thus acknowledging enterprise-level connections. This triggers awareness of both the team and the enterprise as dynamic, feedback-dependent systems rather then static "mechanisms," (Tim Clark and Bruce Hazen, Business Models for Teams: See How Your Organization Really Works and How Each Person Fits In, Amazon Kindle版位置No.375)

この下線部を[動的でフィードバックに依存しているシステムとしてのチームと企業の両方に対する意識」と訳しても何だかわかりにくいのではないだろうか。しかし,think of A as B = think that A is Bという語法知識を応用して考えると,この下線部はaware that both the team and the enterprise are dynamic, feedback-dependent systemsととらえなおすことができることがわかる。このようにとらえなおしてみると,「チームと企業の両方が動的でフィードバックに依存しているシステムであると考えること」とするとわかりやすくなる。
 なおこの形はaware of A as Bを名詞化したものであると考えることができる。この形は辞書の語法記述には出てこないが,たとえば『ランダムハウス英和大辞典』のentityの用例(電子辞書の用例検索を活用すればたどりつくことができる)にbe aware of the mind as an entity apart from the headというのがあって,これが「精神は頭脳とは別の存在であることを知る」と訳してある。この訳しかたを応用すれば上の引用例の下線部も適切に解釈できるのではないだろうか。
 なお,上の引用例のあとには次のような例も出てくる。

Again, the process of creating the mjodel and sharing collective insights helps participants develop more situational awareness, a big step toward better teamwork and self-directed action. (ibid., Amazon Kindle版位置No.375-82)

この引用部のsituational awarenessは形容詞situationalをもとの名詞situationに戻して考え,この名詞とawarenessとのつながりを考えればよいのだが,その際に考えるべきなのがaware of ~を名詞化したawareness of ~である。つまり,この引用部の下線部はawareness of situationsととらえなおすのがよいわけである。

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January 02, 2018

文法的に考える英文読解―読解文法の正確な適用

 英文は単に「雰囲気」で読んではいけない。きちんと文法に則って考える必要があるのだ。たとえば,次の2つの文の意味はどのように異なるのであろうか。


  1. The mountains [seen from the plane] were very beautiful.

  2. [Seen from the plane], the mountains were very beautiful.


1.の文のseen from the planeという過去分詞の句は,名詞the mountainsの後置修飾句,つまり形容詞句になっている。したがってこの文は,「[飛行機から見たはとてもきれいだった」と解釈するのが妥当である。これに対して2の文のSeen from the planeは名詞the mountainsではなくthe mountains were very beautifulという主節全体を修飾する分詞構文(つまり,副詞節)で,この文は「[飛行機から見ると山はとてもきれいだった」と解釈するのが適切なのである。雰囲気だけで読んでいる人は,同じ語が違う語順で並んでいても,意味の違いに気がつかないのである。

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