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May 18, 2017

情報を適切に「引きだす」スキル

 特に学問的な場面において,読むこと・聴くことの最大の目的は,自分に必要な情報を適切に「引き出す」ことであるはずなのだが,院試塾やその他の場での指導を通じてその他の場での指導を通じてぼくが切実に感じるのは,このスキルがきちんと身についていない人が実に多いということだ。そしてこれは,日本語・外国語の両方について言えるようなのである。
 まずは外国語の場合を考えてみる。たとえばぼくが茨城大学大学院で担当している「学術英会話」という科目では,TOEFL iBTのSpeaking Sectionの問題を題材にして学問的な場において必要となる口頭英語の力をつけることを目指している。しかし,実際に問題に取り組んでもらうと,どうも「話す」以前の問題として,内容を適切に引き出す聴きとりができていないことがわかってくる。TOEFL iBTの問題を見たことのある人ならわかると思うのだが,特にIntegrated Tasksにおいては,講義などの情報を適切に聴きとり,「主題は何か」「この事例は何を言うために出されているのか」「この発言の真意は何か」といったようなことを理解していく必要がある。そのように題材を理解しなければ,それを設問指示に応じて自分なりに的確に再構成しながら口頭で説明することなどできないのである。
 このような問題があると感じたので,この授業では学生に,TOEFL iBTのListening Sectionの講義問題に取りくんでもらった。そこでやはり明らかになったのは,題材を全体として取りこみ,そこから必要な情報を適切に「引きだす」スキルが十分に身についていないという問題であった。これもTOEFL iBTの問題を見たことのある人ならわかると思うが,Listening Sectionの講義問題では発言の内容が直接問題にされることは少なく,上で述べたような「主題は何か」「この事例は何を言うために出されているのか」「この発言の真意は何か」といった点を当問題が多いのである。TOEFLが北米の大学で授業についていける英語力があることを証明するための試験であることを考えれば,これは当たり前のことではあだが。
 続いて,日本語の場合を考えてみる。院試塾の「社会人のための大学院研究生活入門ゼミ」では,概説書や専門書の内容を章ごとに要約し,その内容で特に興味をもった点について,自分ならどんな研究をしたいかを説明してもらう課題レポートにとりくんでもらうことが多い。そこでの要約を見ていると,どうも観点の定まらない,全体の「縮小コピー」のような要約を書く人が実に多いのである。そのような人に対してぼくは,章のタイトルや小見出しを中心にしながら,全体ほ貫く中心的な「問い」や,部分部分のミクロな「問い」を自分でたて,それに答える形で要約を進めるように指導する。
 上で説明した英語・日本語どちらの場合においても大切なのは,理解を進めるうえで適切な「問い」を自分なりにたてることのできるスキルなのである。ところが日本の言語教育においては,与えられた問いに答えるスキルについてはしつこく訓練をするが,自分で問いをたてる訓練はまず受けていなこのいのである。ぼくの院試塾などでの指導では,特にこのような訓練を重点的に行っている。それは,このようなスキルが学問の世界においてはとくにじゅうようになると考えているからだ。

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