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October 27, 2012

研究計画書の指導はどう行われるのか

 現在,院試塾でもっとも多く利用されているのが,研究計画書の指導である。「研究計画書作成指導」の他,時期に合わせて,大学院別の特別指導を設置しているものもある。どんな指導なのかというお問い合わせを受けることもあるし,指導料が高いという話を聞くこともある。たしかに,単なる文章指南であれば,高いと感じられるであろう。
 院試塾サイトの「研究計画書合格者コメント」を見ればわかるとおり,院試塾の研究計画書指導は単なる文章指南や,いわゆる「添削」(文章表現の加筆・修正など)ではない。基本的には「構想段階からの指導」を行っている。もちろん,作成途中の原稿が最初に提出されることもあるが,それに直接赤を入れて数回で完成,というのはまれである。研究のアイディアの初期段階から考えていくことになるのがふつうだ。特に提出すべきものがない,という場合には,大学院で何を学びたいか,それを修了後どのように活用していきたいか,これまでにどの程度の学習が進んでいるか,といった点を簡単にメモにまとめて提出してもらう。これは字数などの制約は設けず,構成なども気にしなくてよい。
 それを見て,こちらからいろいろな指示を出す。基本的なこともほとんど学んでいない,という場合には,概説書などを読むように指示することもあるが,基本的には,「何を学びたいか」の部分をより具体的にしていく。たとえば,経営学関係の大学院を志望する人であれば,最初は「経営学」ときわめてばくぜんとしているものを,問題意識などを述べてもらったうえで,「組織論」→「組織におけるモティペーションの意味や役割」といったように,だんだんと具体的に絞りこんでいく。これはいわば「共同作業」で,こちらからの問いかけに受講生が答え,受講生からの相談にこちらも答えながら進めていく。この作業を進めていって,最初はもやもやとしていた問題意識を,学問的な「研究テーマ」にしていくわけだ。
 つねづね言っていることだが,研究計画書とは「研究」の「計画」を書くものである。「何を」「どのように」研究するかが軸となる。そこで,研究テーマがある程度絞り込めた段階で,研究の方法を考えていくことになる。このためには,先行研究を探して読むことが必要不可欠となる。文献調査の方法などについては相談に応じているが,文献そのものをこちらから提案して,「これとこれを読んで…」といった指示はしない。自分で文献を探せることは,大学院での研究に絶対必要な能力であり,これを入学前に身につけておくことが大切だ,というのが最大の理由である。
 ある程度の構想が固まったら,文章の作成に入る。といっても,ある程度時間がとれる場合には,提出用の文章を書き始める前に,まず「研究概要」を作成してもらう。これは,「何を」「どのように」研究するかのエッセンスを,400字程度にまとめるものである。この際,この2点だけを純粋に記述し,それ以外の内容はいっさい含めないように,という注意を行う。というのも,多くの人が現状説明や背景記述,先行研究の内容の解説など,自分の研究と直接関係ないことをダラダラと書いてしまいがちだからだ。研究計画書は,「これだけ勉強したのだから単位をください」という趣旨の,学部のレポートとは正確がまったく異なるものである。残念ながらこの点がわかっていない人が多く,そのまま書きはじめると「知っていること」「調べたこと」ばかりになってしまうことが多い。そこで,そうした間違いを避けるために,「何を」「どのように」だけを純粋に説明する研究概要を、執筆の最初の段階で作成してもらうわけだ。
 研究概要ができたら,それを肉付けする形で,研究計画書を作成していく。「研究概要」をそのまま本文の導入部分に使うこともあれば,それをもとにして展開した内容を本文とする場合もある。いずれにしても,研究概要がきちんと作れていれば,そして,「不要な内容で水増ししない」(この点については特に厳しく指導する)という原則を貫徹することができれば,この段階ではさほど苦労しない。本文作成の段階では,学術文書として適切な構造と形式を備えたものを書くための指導が中心となる。
 上記の過程で,こちらから研究のアイディア,研究テーマを提供したり,先行研究を提案したりすることは,基本的にない。なぜなら,それをやり過ぎると,受講生本人の書いたものではなくなってしまう危険性があるからだ。それは学問的観点から,あってはならないことである。この線をきっちりと守るためには,受講生もこちらも忍耐が必要だが,ぼく自身も学問の世界の隅っこで生きている者として,それは絶対にしないと決めている。多くの合格者の方がコメントで「厳しい」「自主性を重んじる」などと書いてくれているとおりだ。

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