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March 20, 2008

研究のための読書―まずは10冊読んでみよう

 何かを研究したいと考える。つまり,あるトピックについて真剣に知りたいと考える。本当に知りたいと思っているなら,その時から本を探して読んでいかなければならない。院試塾ブログ「本当に興味があるなら」でも書いたが,そういう気持ちにならないなら,まだ時は熟していない。
 まずは概説書から入ることになる場合が多いと思う。学問領域のなかで自分が研究したいことがどのように位置づけられているかを知るうえで,概説書は重要である。概説書といってもいろいろだ。社会科学であれば有斐閣から「アルマ」や「Sシリーズ」などの概説書のシリーズがある。たとえば消費社会論について興味を持ったら,日本語で手っ取り早く読めるのは間々田孝夫の『消費社会論』『消費社会のゆくえ』で,どちらも有斐閣から出ている。世界思想社の「学ぶ人のために」「世界思想ゼミナール」といったシリーズも人文・社会科学関連のものを豊富に揃えている。たとえば,医療社会学を学びたい場合,進藤雄三/黒田浩一郎編『医療社会学を学ぶ人のために』や進藤雄三『医療の社会学』などの概説書を出版している。
 もちろん,それぞれの出版社に得意分野がある。たとえば,英語学なら研究社大修館書店が強い。こうした「カン」をつかむことも,研究を進めるうえでは重要だ。
 概説書を読むことは大切だが,とにかく何冊でも読めばよいというものでもない。3冊目ぐらいで「これはもう知っている」という内容がだんだん多くなってくる場合が多い。こうなったら次の段階に進めると考えてよい。この「次の段階」は大きく2つ考えることができる。1つは,概説書の1章を構成する分野に対象を絞った概説書をさらに読むことで,もう1つは概説書に挙がっている文献を読むことだ。これは,最初に読んだ概説書の対象範囲による場合も多い。言語学を例にとると,世界思想社の『言語学を学ぶ人のために』は対象範囲がかなり広いのに対して,『生成文法を学ぶ人のために』は範囲が狭くなる。どちらを選ぶことになるかは探しかたにもよるだろう。自分の研究したいことが最初から生成文法という分野に位置づけられれば,後者を選ぶ可能性が高い。一方,自分の研究したいことが言語学という広い分野に含まれることはわかるが,それ以上の予備知識がない,という場合には,前者を手にする可能性のほうが高いだろう。もちろんこの場合でも,前者を読んだ結果自分の課題がどの分野に位置づけられるかはさらに具体的にわかってくるだろう。
 このようにして本を探し,まず10冊読むことを目標としてみよう。読み終えたときには,学部レベルの基本知識はある程度身につくだろう。その分野の研究テーマなどについてもだいぶ見通しがよくなり,自分が研究したいこともより明確になっているだろう。10冊という数字は,これまでのぼく自身の研究・学習経験と,院試塾での指導経験から出てくるものだ。
 ただし,この作業を1人でやろうとすると大変かもしれない。途中で投げ出したくなるときもあるだろう。そんな時には,誰か報告する相手を持つとよい。定期的にやるようにすればペースメーカーにもなるし,アウトプットを意識すれば,自分でただ読むだけというのに比べて読みも深くなるだろう。といっても,なかなか身近にそういう相手がいないことも多いだろう。社会人の場合は特にそうだ。そんな時には,院試塾の「社会人のための大学院研究生活入門ゼミ」を活用してほしい。課題レポートやブックレポートの作成を通じて,研究・学習の基本姿勢も身につけられるよう配慮している。
 最後にもう1つ。読もうとする本が英語でしか出ていない場合も出てくるだろう(分野によっては他の外国語も考えられる)。そんな時には,たとえ大学院の入試に英語がなくても,文献を読解して研究が進められるだけの英語力を身につけることもあわせて考えておく必要がある。

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