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January 28, 2006

比較級の意味とmore or less

 more or lessという表現がある。多くの人は「多かれ少なかれ」と覚えているようだが,この訳語は意外と適用範囲が狭い。たとえば,I've more or less finished the book. [OALD]は「私は多かれ少なかれその本を読み終えた」と訳しても意味不明で,「だいたい」という訳語を採用して「私はその本をだいたい読み終えた」ととらえるべきである。
 また,この組み合わせがつねに熟語的意味を持つとはかぎらない。院試塾の「短期添削コース」の課題には以下のような文が登場する。このmore or lessを「多かれ少なかれ」とするのはまったく意味不明なのだが,残念ながらよく考えずにそう訳す受講生が多い。


Industries become more or less attractive over time, and competitive position reflects an unending battle among competitors. Even long periods of stability can be abruptly ended by competitive moves.

 そもそも,比較級には大きく分けて2つの意味がある。1つは同時に存在する2つのものの間での比較,もうひとつは時間の経過の前後で行う比較,つまり変化の意味である。前者はHe has more books than I.といったごく基本的なもので,解釈上特に問題は生じない。後者の例としては,More people are using the Internet.を考えてみればよいだろう。この2つの意味は,おおむね以下のように図解できる。
more_1

more_2

 ここからmore or lessについて考えを進めていこう。まず,「だいたい」「ほぼ」といった意味(この根底には「多かれ少なかれ」ないしは「程度の差はあれ」があると考えてよいだろう)は以下のように図解できる。
more_or_less_1

「程度の差はあるが基本的には~だと言って差し支えない」というのがもともとの意味だと見ることができるのではなかろうか。上で挙げた例のI've more or less finished the book.に即して言うなら,1つ1つの縦棒は人によってどの程度まで読み終えていると見るか,を想定したものと考え,それに程度の差はあるが「だいたい」「ほぼ」finishしていると言える,といういみだと考えればよいだろう。つまり,この意味は基本的に,「静的な比較」のmore / lessに由来していると考えることができる。
 これに対して,課題から引用したmore or lessの例は「動的な比較」のmore / lessを含むもので,以下のように図解すればよくわかる。
more_or_less_2

more or less attractiveに続いてover timeという表現がある点にも注目するとよい。これが図中の「時間の流れ」を具現していると考えればよいのだ。
 なお,このoverについても誤りが多いが,『ジーニアス英和辞典』を見ても,Everything changes over time.「時がたてばすべて変る」という用例がtimeの項にきちんと挙がっている。これまでにも何度も書いてきたが,辞書はきちんと参照しなければならない。

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