June 03, 2018

関係形容詞whatever

 関係詞に関する文法的知識がいいかげんなままになってしまっている学習者は多いが,なかでもとりわけ「関係形容詞」は例文を機械的に覚えているだけの人が多いのではないかと思う。そもそも,中学英語で最初に関係代名詞を学習するときにこの「関係」という概念をきちんと説明していないのがいけないのだとぼくはつねづね考えている。この「関係」は英語ではrelativeと言うが,これは動詞relateから派生している形容詞で,つまり「接続詞の機能をもちあわせている」という意味なのである。さらに文法的に言うなら,関係詞とは従属接続詞の機能を含んでいる機能語なのであり,英文法の体系においては従属節は名詞節,形容詞節,副詞節の3種類である。「関係○○詞」の「○○詞」の部分はその後が説の内部ではたす役割を表し,これもやはり関係代名詞,関係形容詞,関係副詞の3種類である。そうすると,単純計算では3×3=9の区別を考えればよいということになるが,このうち「形容詞節を作る関係形容詞」は存在しないので,これ以外の8種類を考えればよいのである。
 さてそれでは,この関係形容詞の実例を見てみることにしよう。


The cure for all illnesses was to restore whatever balance of humours was best for each patient. (William Bynam, A Little History of Science, Amazon Kindle版位置No.363)

下線部の節が関係形容詞節で,動詞restoreの目的語になっている。一方,この節の内部構造を見てみると,whatever balance of humourが主語,wasが述語動詞,best (for each patient)が補語になっていて,この主語の名詞句の主要部であるbalanceを関係形容詞のwhateverが修飾している。
 なお,学習用英和辞典でwhateverを引いてみると,たとえば『ルミナス英和辞典』では,形容詞の語義を大きく3つにわけており,そのうち2つが関係形容詞の用法(ほかの1つはnot ~ at allのat allに相当する用法)である。それぞれの例文を引用しておくと,名詞節を作る関係形容詞の例はI will buy you whatever book (=any book that) you like.「君が好きな本ならどんな本でも買ってあげよう」/I will help you in whatever way (=in any way that) I can.「できる限りの方法であなたを助けてあげよう」であり,副詞節を作る関係形容詞の例はWhatever book says that, it is not true.「どの本にそう書いてあるにせよ,それは本当ではない」である。

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May 31, 2018

名詞化を適切に読みほどく

 抽象的な内容の英文では,動詞や形容詞の意味・内容を派生名詞で表現する名詞化が多用される。このような英文を日本語に訳す場合,名詞化をそのまま名詞で表したのでは,たいへんわかりにくい訳文になってしまうので,もとの動詞や形容詞に戻して訳すのが適切である。この点についてはすでに何度もとりあげているが,この記事でも実例を紹介しながら解説していこう。


On the psychological side, someone who is experiencing stress is much more ready to perceive threats than they would be otherwise, and will often end up reacting to situations as if they were threatening when this isn't really appropriate. They are also more likely to make errors, as all of us are when we are anxious, which can also be a problem in working life. In the short term, stress results in an inability to concentrate, irritability, and emotionality, and the loss of the person's sense of humour. (Nicky Hayes, Understand Applied Psychology, Amazon Kindle版位置No.3113)

下線部はunable to concentrate / irritable / emotional / [V]lose [O]the person's sense of humourともとの形に戻して解釈し,「集中できなくなり,怒りっぽくなり,感情に流されてしまうようになり,ユーモア感覚をなくしてしまう」などと訳すのが適切なのである。

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May 30, 2018

「自灯明」の教えと学問的姿勢

 ぼくは院試塾の指導を,自らの学問的理想の実践と考えている。ぼく自身は権威主義はおよそ学問的な姿勢ではないと考えていて,院試塾の受講生にも「自ら考えること」を求めている。ぼくがそのように言うからそのようにする,というのではなく,ぼくの言うことが学問的に正しいと納得するからそうする,という姿勢を求めている。
 仏教に「自灯明」「法灯明」という教えがある。釈尊は入滅直前に弟子に次のように説いたとされている。


おまえたちは,おのおの,自らを灯火(ともしび)とし,自らをよりどころとせよ。他をよりどころとしてはならない。この法を灯火とし,よりどころとせよ。他の教えをよりどころとしてはならない。(『仏教聖典』Amazon Kindle版位置No.183)

「神授業」や「カリスマ講師」を盲信して自分の頭で考えようとしないのは,学問的なありかたとしても生きかたとしてもまちがっているのではないだろうか。ところが,学生ではなく社会人になっても,そのような考えかたから抜け出せていない人が多いのである。

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受動態の名詞化

 動詞や形容詞を派生名詞形に書きかえる名詞化についてはすでにこのブログで何度か解説している。基本をもう一度ここで復習しておこう。


  • [S]The enemy [V]destroyed [O]the city.→[S]the enemy's [V]destruction [O]of the city=the [V]destruction [O]of the city [S]by the enemy


destroyを名詞化してdestructionにすると,もとの動詞の主語は所有格またはby句で,目的語はof句でそれぞれ表現される。では,上の例文を受動態にして,The city was destroyed by the enemy.としたうえで名詞化するとどのようになるであろうか。やはり主語は所有格になり,the city's destruction by the enemyとなるのである。destructionという名詞化形そのものには能動・受動の形式的な区別はない。これを言語学の専門用語で「中和」と呼ぶ。
 このような受動態の名詞化の実例を見ておこう。

So carrying out job analysis requires far more than just observation. It involves gathering a wide range of information about the job itself, about the amount of variety and change there is from day to day, about levels of responsibility and scope for decision making, and a number of other such attributes. Once it has been carried out, a job analysis might contribute to overall management policy, such as providing baseline knowledge for a management restructuring; it might be used for an individual's appraisal to determine their pay level for the coming year, or their suitability for promotion; or it might be used to inform an recruitment advertisement. (Nicky Hayes, Understand Applied Psychology, Amazon Kindle版位置No.3084)

下線部のan individual's appraisalは[V]appraise [O]an individual→[S]an individual [V]is appraised.を名詞化したものである。日本語に訳す場合には,能動態に戻して「個人を評価する(こと)」とするとよいだろう。

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形容詞を作る接尾辞-ableと前置詞の編入

 danceableという形容詞がある。日本語でも「ダンサブルな音楽」のように,カタカナ表記で用いることがある。なんとなく和製英語のようにも思えるが,れっきとした英語で,辞書にも載っている。この語はご形成の観点から極めて興味深い。もとの動詞danceを用いて書き換えると,たとえばa danceable tuneはa tune that you can enjoy dancing toのように,前置詞toが必要となる。これを言語学の専門用語で「編入」と言う。つまり,形容詞danceableには前置詞toが編入されているわけである。
 danceable以外にも,よく知られている語で編入がからむ例として,dependable / reliableがある。たとえば,a reliable friendはa friend that you can rely onと書き換えることができ,形容詞dependableには前置詞onが編入されているのである。

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May 25, 2018

文章の要約―論理構造にしっかり注目する

 大学入試でも要約問題は出題されているが,大学院入試においても,小論文や英語で要約問題が出題されている場合がある。この要約問題が苦手だという人が実は多いのだが,そのような人は文章を読んだときの「印象」だけで,大切だと思える部分をただつなげて要約を作っているのではないかと思う。
 しかし,文章というものには必ず論理構造が存在する。要約はその論理構造を適切に反映したものでなければならない。たとえば,あることがらの概要を説明したうえで,それに関連する問題点が2つ示されている,という論理構造の文章を要約するのであれば,結果としてえられる要約文はこの論理構造を明確に反映するもので泣けばならない。
 この際に注目すべきであるのが,文章の論理構造を示す「談話標識」(discourse markers)と呼ばれるものである。これにはたとえばfor example / thereforeなどの論理的接続表現に加えて,the first [second / third] reason is that ...のようなものも含まれる。英語の文章では決まったものを用いることが多いが,日本語の文章はこの点でより「自由度」が高いように思われる。たとえばある大学院の小論文問題では,コミュニケーションにおいては話し手と聞き手とが「共通の基盤」を共有することが大切であると説明したうえで,「コミュニケーションにおいて第一に念頭におくべきは,…」として第1の問題点を説明し,それに続いて数段落あとで「共通の基盤に関して考える際に注意すべきことがもう一つある。」として第2の問題点を説明する,という構造になっている。上で挙げた2つの導入表現だけを見ていると,1つのことがらについての2つの問題点がこれらによって対比的に述べられている,という論理構造は明確に読みとれないかもしれない。しかし,第2の導入の「もう一つ」を読んだときに,この前に出てきている「一つ」は何であろうかと自問したときに,最初の導入表現に思いいたるわけである。
 この読解の結果から要約文を作成するとなると,まずは最初の共通の基盤の大切さに関する説明内容を簡潔にまとめて提示したうえで,「この点で注意すべき点が2つある」として,その後「その1つは…」「もう1つは…」という形でそれぞれの注意点を述べるのか適切であろう。

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May 24, 2018

院試塾の指導とぼく自身の学び

 ぼくは院試塾の指導を単なる仕事としてだけとらえているわけではなく,自分が勉強するきっかけでもあると考えているから,受講生が取り組んでいる内容に少しでも興味があれば関連する書籍を読むことにしている。今回もそのような本の情報を受講生に伝えたところ,「そこまでしてもらえるとは思わなかった。とてもありがたく感じている」とのメールをいただいた。ぼくにとってはごく当たり前のことなのだが。
 たとえば英語の指導でも,最近東京大学人文社会系研究科に合格した受講生(この方の合格者コメントはこちら)の指導のために,その受講生が受験する分野の英語の概説書を使った。また,大学入試問題の解答・解説を書く仕事もしているが,問題文の出典となっている本のKindle版があれば,できるかぎり買って読むようにしている。
 要するに,ぼくの仕事は自分の学問の入口でもあるのだ。

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May 23, 2018

英語の受動態の意味と機能

 中学英語以来の習慣なのか,英語の受動態を意味をよく考えずにとにかく「~される」と訳す人が実に多い。しかし,英語と日本語とでは受動態の意味・機能が異なるので,このような直訳思考は危険である。英語の受動態は,語順が固定しているために主語が主題性を帯びることに決まっている状況で,動作主(能動文の主語)以外のものに主題性をもたせるためのしかけなのである。このことは,英文法研究でよく問題にされる以下の例からもわかる。


  1. A: What did John do?―B: John kissed Mary.

  2. A: What happened to Mary?―Mary was kissed by John.


日本語であれば,2.の答えの文は「メアリーにはジョンがキスをした」と,語順の転換と取り立て助詞「は」を使って表すところであろう。
 次の例のbe joined by ~という受動態も「加わられる」と日本語で受動態を用いて訳すとおかしくなってしまう。

By mid-century, the stethoscope had been joined by the ophthalmoscope and laryngoscope, the thermometer and spirometer. (Oxford Sentence Dictionary)

A joined Bという形の能動文では,主語Aが既知の旧情報,目的語Bが未知の新情報を表すのに対して,B is joined by Aという受動文では,主語Bが旧情報,by Bの句が新情報を表す。つまり,上の引用例では,the stethoscopeが文脈上既知であり,by以下に置かれているものが未知であるために,受動態が用いられているわけである。

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May 14, 2018

派生副詞の解釈について―「~的に」から脱却しよう!

 名詞から派生している形容詞を「~的な」,副詞を「~的に」と訳してもわかったことにはならないという点はこれまでにも何度か指摘しているが,今回もそのような例を2つとりあげて解説を加えておきたい。


  1. Meanwhile, space zealots who do not properly factor the role of war into the spending landscape are delusionally certain that all we need today are risk-taking visionaries like JFK. (Neil deGrasse Tyson, Space Chronicles: Facing the Ultimate FrontierAmazon Kindle版位置No.182)

  2. If not language itself, perhaps the Great Leap Forward coincided with the sudden discovery of what we might call a new software technique: maybe a new trick of grammar, such as the conditional clause, which at a stroke, would have enabled ‘what if’ imagination to flower. Or maybe early language, before the leap, could be used to talk only about things that were there, on the scene. Perhaps some forgotten genius realised [A]the possibility of using words referentially [B]as tokens of things that were not immediately present. (Richard Dawkins, The Ancestor's Tale: A Pilgrimage to the Dawn of Life, Amazon Kindle版位置No.1007-14)


引用例1.のdelusionallyを「妄想的に」,2.[A]のreferentiallyを「指示的に」と訳してみたところで意味不明で,そのように訳した当の本人が内容を的確に理解しているとは言いがたいのである。1.のdelusionallyは結局,certainであるという感覚がdelusionであると言っている(だからこそ副詞としてcertainを修飾しているである)のだから,「きっと~だと思うだろうがそれはまちがいだ」などとすべきである。2.[A]のreferentiallyは2.[B]の内容との関連から,「その場に存在しないものを指し示すのに」と説明を加えながら訳していく必要がある。
 結局,英文和訳とは内容を自分の責任でしっかりと引きうけて,それを自分の責任で自分なりの日本語にすることなのである。その責任を放棄するのは「逃げ」でしかないのだ。

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May 10, 2018

学術英文における「クジラの構文」

 A whale is no more a fish than a horse is.といった例で覚えている人の多い,いわゆる「クジラの構文」は,受験英語の重要構文とされているが,このブログでもこれまでに何度かとりあげてきたように,学術英文でも用いられることの多い構文である。今回もそのような例を紹介しよう。


The ‘gap’ comes from hindsight. There was nothing resembling a gap at the time, and the ‘classes’ that we now recognise were no more separate, in those days, than two species As we shall see again, jumping gaps is not what evolution does. (Richard Dawkins, The Ancestor's Tale: A Pilgrimage to the Dawn of Life, Amazon Kindle版位置No.388-97)

下線部のthe ‘classes’ that ...以下の部分がいわゆる「クジラの構文」になっている。この構文は,すでに解説しているとおり,2つの命題を同時に否定するものであり,ここではthe ‘classes’ that we now recognise were not separate. / Two species were not separate.という命題をつなぎ合わせ,それらが否定される度合いが等しいと言っているわけである。

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