October 19, 2017

形容詞の修飾対象―a hot cup of coffeeの類例

 a hot cup of coffeeのように,形式上は数量表現のcupのほうを修飾しているように見える形容詞が実質的にはcoffeeのほうを修飾している場合について,このブログでこれまで何度かとりあげて解説してきた。今回もそのように解釈したほうが適切であると思われる実例を紹介しておこう。


But those instincts aren't formed overnight. Rather, they are the result of shared learning―of employees working together to solve problems and figuring out what works. As long as the way they have chosen keeps working to solve a problem, the culture will coalesce and become an internal set of rules and guidelines that employees in the company will draw upon in making the choices ahead of them. (Clayton Christensen, Competing Against Luck: The Story of Innovation and Customer Choice, Amazon Kindle版位置No.3094-110)

特にthat以下の関係節の内容を考えあわせると,内在化しているのはsetであるよりはrules and guidelinesのほうだと考えるほうが妥当なのではないだろうか。

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October 17, 2017

用法の正確な判断―absentの前置詞用法

 次の引用例のabsentの意味がわかるだろうか。辞書を調べるためにはまず,用法を正確に判断しなければならない。


The advantage of this is that it causes an organization to become self-managing. Managers don't need to enforce the rules. They understand the "commander's intent"―a military term that explains why soldiers up and down the ranks know how to make the right choices absent a specific order. (Clayton Christensen, Competing Against Luck: The Story of Innovation and Customer Choice, Amazon Kindle版位置No.3100)

absentというと多くの人は形容詞の用法を思い浮かべるのではないだろうか。動詞の用法もあると知っている人は中級以上と言えるだろう。しかし,このabsentは前置詞として用いられている。absent a specific orderで「具体的に命令されなくても」という意味になるのである。辞書を見ると,少しだけではあるがこの用法にふれている。たとえば『ルミナス英和辞典』にはabsentの前置詞用法として「《米略式》…がなければ」という記述がある。この記述を見つけるためには,まず文中でabsentがどのように用いられているかを正確に見きわめる必要があるのだ。

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October 16, 2017

前置詞の意味―正確に理解する

 前置詞の意味はなかなか単純には処理できないものである。以下の引用例を見ればこのことは非常によくわかるのではないだろうか。


You can't innovate [A]to the broad goal of helping children live, but you can innovate [B]around the very specific circumstances of that struggle. Experts tell us that it takes thirty seconds of vigorous washing with soap and hot water to eliminate germs―but in the circumstances that Unilever was innovating [C]into, that was not likely to happen. (Clayton Christensen, Competing Against Luck: The Story of Innovation and Customer Choice, Amazon Kindle版位置No.3080)

下線部[A]のtoはたとえばdance to the music「音楽に合わせて踊る」のtoのように「〜に合わせて」という意味である。下線部[B]のaroundは「『中心・基礎』の意味を表すaround」で解説したもので,「きわめて具体的な状況をもとにして」という意味になる。下線部[C]はintoの移動の意味から発展させて考えれば,「技術革新によって新規参入しようとしている環境」という意味である。

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October 15, 2017

couldが未来のことがらを表す例

 これまでにこのブログで何度か,助動詞のいわゆる「過去形」が現代英語では基本的に過去の意味を表さないことについて解説してきた。今回はさらに,「過去形」のcouldが未来のことがらを表す例をいっしょに見ておこう。


If you want to see the future, look up. And this is how it [=the Earth] could appear 250 million years from now. (Cosmos: A Spacetime Oddysey, "Standing Up in the Milky Way")

この引用例のcould appearには時の表現として未来を表す250 million years from nowがついていて,助動詞のいわゆる「過去形」を含むcould appearが未来のことがらを表していることがわかる。「could=できた」という単純な図式で考えていてはいけないのである。
 なお,学問的な英文法では英語の時制は現在時制と過去時制の2つだけとされ,「未来時制なるものはない」と教わって学生は少なからずショックを受けるのであるが,それもこの例を見ていればわかる。未来時制を認める学校英文法の体系に従うと,上の引用例のcould appearはどの時制なのであろうか。学問的には「未来を表す表現」は複数あって,willやbe going toだけが未来を表すわけではないから未来時制を認めないのだと説明されるが,この引用例などはまさにぴったりの例なのである。
 なお,この「英語に未来時制はない」という点について『実例解説英文法』では「未来時制というものはなく,未来の事柄を表すためには,will,shall,be going to,be about to,be toなどの表現を用います」(p.290)と述べている。

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大学院入試を機会に役に立たない習慣をunlearnしよう!

 unlearnという英単語があるのをご存じだろうか。このあたりがぼくのもともとの専門なので少し解説しておくと,接頭辞un-には2種類あって,1つはたとえばun-importantのように形容詞につくもので,これは「重要な」→「重要でない」のように否定を表す。もう1つは動詞につくものでもとの動詞と逆の動作を表す。例としてはtie「結ぶ」→un-tie「ほどく」あたりが適切だろう。unlearnのun-も後者で,「身につける」の逆だから「忘れる」ということになるが,ただ忘れてしまうのではなく,意図的に記憶から捨てるのである。COBUILDではIf you unlearn something that you have learned, you try to forget it or ignore it, often because it is wrong or it is having a bad influence on you.「身につけた何かをunlearnするとは,それを忘れたり捨てさったりすることで,その理由は間違っていたり悪影響を及ぼしたりするからであることが多い」と定義している。英和辞典の訳語でぼくが感心したのは,『リーダーズ英和辞典』の「…の誤りに気づく」である。
 院試塾での指導においても,役に立たない習慣をunlearnしてもらおうとすることが多いのだが,特に過去の成功体験に裏づけられていると本人が思いこんでいる習慣はなかなか捨ててもらえない。ところが,その習慣が実は「足をひっぱっている」ことが実に多いのである。ぼくが特に気づくことが多いのは次の4つである。


  1. 外国語学習の基本は単語で,単語集の暗記をすれば外国語の文章がすらすらと読めるようになる

  2. 文法とは4択穴うめ問題を解くための解法集であり,読解に役立つのは頻出構文の暗記である

  3. 勉強は効率的に行うものであり,そのための「裏ワザ」を知っている人から教わるのがてっとり早い

  4. 文章は例文をもとにすればよいものが書ける


この4つだけにかぎったことではないのだが,ぼくが日々の指導で気がつくのは特にこの4つである。最初の2つはおそらく大学入試のときに英語を勉強した体験にもとづいているのであろうが,このブログの英語カテゴリで常々解説しているとおり,英単語の訳語と頻出構文の暗記による学習は実は読み間違いの主な原因なのである。単語の意味は1つ2つの訳語ではとらえきれないものだし,読解のためにほんとうに身につけなければならないのは,目の前にある英文の構成原理である文法なのである。3.と4.は研究計画書の指導などで特に感じることである。3.のようなことは直接要求されることもあるし,また,こちらとして「学問的にまっとうな」指導をしているのに対して不満を感じているのが感じられることもある。「高い金を払ったのだからチャッチャッと片づける効率的な方法を教えろ」というのであろう。しかし,学問研究などというのは,「学問に王道なし」の言葉どおり,基本に忠実に手間と時間とをかけて必要な努力を積み重ねていくしかないのである。それが「効率が悪い」ように見えて,実はもっとも「効率のよい」方法なのである。また,研究計画書などの指導をしていると「具体例を示してほしい」という希望を言ってくる人がいるが,これなどは4.のような考えかたにとらわれているのである。ぼくに言わせれば,例を意味というのは物事が本当にわかってはじめてわかるものなのである。それに,ただ例を「まねた」だけの研究計画書は薄っぺらいものになってしまうし,本当に自分のものになっていないから,面接などで「化けの皮がはがれる」のである。
 一生ものの学問を真剣に身につけたいと考えている人には,このような習慣はぜひその誤りに気づいてunlearnしてほしいものである。

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辞書はきちんと引こう!―chemistryの語義

 chemistryという英単語の意味は何か?と尋ねたら,多くの人は誇らしげに「化学」だと答えるのではないだろうか。しかし,次の引用例のchemistryを「化学」と訳して,この文が本当にわかっていると,はたして言えるだろうか。


The chemistry of carbon allows for the existence of a molecule that is able to replicate itself and pass information on from generation to generation. (Wonders of Life, "Endless Forms Most Beautiful")

chemistryという語の意味を「知っている」という思い込みを捨てて辞書の記述と虚心坦懐に向きあってみると,たとえば『ルミナス英和辞典』の2番の語義は「化学的性質,化学構造[作用](of)」となっていて,上の引用例のようにof句を従えている場合には「化学的性質」などととらえたほうがよいと教えてくれるのである。そして実際,上の引用例のThe chemistry of lifeも「炭素の化学」よりも「炭素の化学的性質」ととらえたほうがずっと適切なのである。

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October 14, 2017

前置詞toの語義

 前置詞toというと移動の動詞などと組み合わせて移動の着点を表す意味・用法が一般的によく知られているが,たとえば『ルミナス英和辞典』のtoの語義は大きく14がある。これらを統一的にとらえる考えかたについては,たとえば田中茂範『表現英文法[増補改訂版]』のpp.516-9で解説されている。次の引用例のtoはどの意味であろうか。


The rodents are all built to the same toothy design and have proliferated and diversified, presumably because it works so well. (Richard Dawkins, The Ancestor's Tale: A Pilgrimage to the Dawn of Life, Amazon Kindle版位置No.3975-80)

この例のtoの意味の例として比較的よく知られているのはdance to the music「音楽に合わせて踊る」のtoであろうか。『ルミナス英和辞典』の語義では14番の「[随伴・一致・適合などを示して] …に合わせて[合って]」である。『ルミナス』ではdance to the musicの例は挙がっていないが,『新英和中辞典』ではずばりこの例が挙がっている。
 toと言えばgo to〈場所〉,という固定観念から抜けだすことができるかどうかが,初級から中級への関門の1つではなかろうか。

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文末焦点と受動態

 学校英文法ではあまり重視されないが英語の文の構成原理として重要なものの1つに「文末焦点」がある。学校英文法の枠組みに縛られずに学習者に英文法を説明しようとしている本に中村捷『実例解説英文法』があるが,この本では文末焦点を「英語の情報の流れには旧情報⇒新情報という一般原則があります。したがって,文末には新情報である重要な情報があることになり,これを文末焦点と呼ぶことがあります。焦点とはその文で重要な情報のことです」(p.361)と説明している。また,『最新英語学・言語学用語辞典』(開拓社)では,文末焦点の関連項目として「文末重点」という概念についても説明しており,これは「通常,主語や目的語が長い句であったり複雑な構造を成している場合,文末に置かれることをいう。また,重要な情報ほど詳細に述べられるため,文末重点は文末焦点の帰結と考えられている」(p.161)と説明されている。
 さて,このブログではこれまでに「受動態と情報構造」や「英語の受動態の機能―日本語の『〜させる』と安易に対応させることの問題点」などの記事で,日英語の受動態を安易に訳のレベルで対応させて解釈することの問題点を指摘してきた。今回もそのような実例をいっしょに見ていくことにしよう。


Eighty-five million years ago, in the hot house world of the Upper Cretaceous, we greet Concestor 11, approximately our 25-million-greats-grandparent. Here we are joined by a much more diverse band of pilgrims than the rodents and rabbits who swelled our party at Rendezvous 10. (Richard Dawkins, The Ancestor's Tale: A Pilgrimage to the Dawn of Life, Amazon Kindle版位置No.3975)

上の引用例の下線部を「人間は…によって加わられた」などと訳しても意味がわかっていることにはならない。なぜこの文が受動態になっているかと言えば,byの句が非常に長く,主語のweがきわめて短いために,上で見た「文末重点」の原則に従って受動態になっているのである。つまり,「人類には…が加わるのである」などと解釈するのが適切なのである。日本語は語順が比較的自由で,「…が人類に加わる」とも,「人類に…が加わる」とも言えるが,英語ではこのような語順の変更が許されないので,受動態を使っているわけである。

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助動詞の「過去形」couldの意味と用法

 以前,「いわゆる助動詞の『過去形』について」という記事で,助動詞の過去形と呼ばれている形が過去の意味を表すことはむしろ少ないことについて実例を挙げながら解説した。今回もそのような事例をまずは見てみよう。


If I draw a tree of life for the primates, then we share a common ancestor with the chimps and bonobos. About four to six million years ago. And if you compare our genetic sequences, you find that our genes are 99% the same. We go back to the split with gorillas, about six to eight million years ago, and, again, if you compare our genes then you find that they are 98.4% the same. Back in time again. Common ancestors with our friends over there, the orang-utans, then our genes are 97.4% the same. And you [A]could carry on all the way back in time. You [B]can look for our common ancestor with chicken and [C]you'd find our codes are about 60% the same. (Wonders of Life, "What is Life?")

下線部[A]のcouldは過去のことを表してはいない。人間とチンパンジーやボノボとの共通の祖先,人間とゴリラとの共通の祖先,人間とオランウータンとの共通の祖先,と順に遡ってきたうえで,この遡っていく思考を続けていこうと思えば続けていくことができる,という意味を表しているのである。これが過去の意味ではないことは,続いて出てくる下線部[B]がcanといういわゆる「現在形」になっていることからもわかる。そして,さらに先の下線部[C]ではyou'd[= you would]が出てくるが,これは仮定法のwouldで,「もしニワトリとの共通の祖先を探せば」という隠れた仮定条件を承けているわけである。
 なお,このようなcouldの用法についてMichael SwanのPractical English Usage4の82.5 other uses of couldでは,Could is not only past: we also use it as a 'softer', less definite form of can.(couldは過去だけを表すわけではない。canの「より柔らかい」,明言を避けるための形としても使うのである)と説明し,'What shall we do tomorrow?' 'Well, we could go fishing.'という例を挙げている。

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A is all about Bの実例を追加

 A is all about B「Aでもっとも大切なのはBである」という表現については,この前置詞aboutの意味が「中心・本質」である点も含めて,このブログで何度かとりあげて解説してきた。今回はその実例を追加で紹介しておこう。


For plants, as for animals, life is all about facing and overcoming challenges. (Life, "Plants")

下線部は「生きていくうえでもっとも大切なのは課題に真正面からとりくんで解決することである」という意味である。

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