研究計画書に決まった「書きかた」があるわけではない
研究計画書の「書きかた」を教えてほしい,という要望がときどきある。しかし,そういう人のほとんどが直面しているのは,実は「書きかた」の問題ではなく「考えかた」の問題である。もっと言うと,何を書くべきかもわかっていないし,また,仮にそれがわかったとしても,書くべきことの材料をきちんと持っていないのである。
何度も書いてきたことだが,「研究計画書」とは「研究」の「計画」を書くべきものだ。もちろん,大学院によってはさまざまな記述内容の指定をしている場合があり,その場合にそれに従うべきであることは言うまでもないが,内容の指定がなければ,「研究」の「計画」を書けばよいのである。
最大の問題点は「研究」とは何かがわかっていないことだ。「研究」は「学習」とも「調査」とも違う。「学習」は当人が何か新しいことを身につければよいが,「研究」では多少なりとも新しいことを学問の共有財産に付け加えるものでなければならない。実際にそれが可能であるかどうかは別にしても,それを標榜することは最低限必要だ。
また,「調査」だけでは研究は成立しない。「調査」は単なるデータ収集にすぎないからだ。調査結果をどのように分析・考察して研究の目標を達成するかが勝負どころとなる。
こうした点について,「研究をしたことがないからわからない」という人がいるが,そういうことを言っていては大学院になどいつまでたっても入れない。研究などいつまでたってもできない。自分が研究というものをしたことがなくても,他人の研究成果を目にしていない人はいないはずだ。もしその分野の研究論文を1本も読んだことがない,というのなら,研究計画書など書く前に,まずはしっかり勉強しなければならない。
研究論文というものは,必ずその学問分野の研究の流れという「文脈」のなかで書かれている。その文脈のなかで,それまでの研究に対して何か新しいものを付け加えたり修正をせまったりするのが研究論文である。だから,1本の研究論文をまともに読みこなすためには,この「文脈」を理解する必要がある。このようにして何本かの研究論文を読んでいけば,たとえ自分自身では研究をしたことがなくても,研究とは何かがわかるはずだ。もちろん,この過程で自分なりの疑問が持てればしめたものだ。
「計画」については,何も詳細なものを提示する必要はない(言うまでもないことだが,記述指示でそうした内容が求められている場合は別)。限られた期間で目標をどのように達成していこうと考えているについて,ある程度の見通しが示せればよい。その際,先行研究に十分言及することが大切である。自分の研究を,やはりそれまでの研究の文脈に位置づけていく必要があるからだ。



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