大学院入試の英語は,大学院での研究で使える英語力,とりわけ文献の読解能力を試すものである。そのための「基礎」とはもちろん,学部レベルの専門英書講読等で要求される水準だと考えてよいだろう。院試塾の「総合通信指導コース[基礎科]」(「大学院英語基礎力養成プログラム」にも含まれている)は,大学院入試の英文和訳問題を通じて,この「基礎」を学ぶことを目的としている。
なかでも受講生が特に苦手とするのは,名詞化の読みほどきである。既にこのブログや「院試塾ブログ」でもとりあげているが,ここでは実際の課題文を用いて確認することにしたい。以下の文を見てほしい。
Strong ethnic identities are today frequently seen as a source of social disintegration. Yet over most of human history, as well as in the present, different ethnic groups have coexisted peacefully on common or adjacent terrains. The current revival of communal identities in all nation-states, from the most to the least "developed," and even the creation of new mythical identities with no actual historical foundation, suggests that these identity groups may have an important function to serve. The resurgence may in fact be a response to the failure of the modern nation-state to meet the needs of its diverse populations―not only the need for the equitable distribution of resources and opportunities, but the need for meaning and a sense of self-worth.
下線部の最初にあるThe resurgenceは,前の文のThe current revival of ...を指している。
The resurgenceとなっているから指示対象を探さなければならない。これも読解の基本である。訳としては「復活」などとしても差し支えないが,「復活すること」ととらえたほうが「何が」に相当する要素を想起しやすいから,より深い読解につながる。a response to ~も「~に対する反応」で間違いではないが,名詞化形が可算名詞として用いられた場合多くが「結果」の読みになることを知っていれば,「~に対して生じたもの」といった柔軟なとらえかたが可能になる。
もっとも重要となるのはthe failure ...の部分をどうほどいて解釈するかだ。failure of ~ to VはS fails to Vを名詞化したものなのだが,いくつかの英和辞典を引いてみても,これをわかりやすく訳した用例はなぜか見あたらない。「~がVできないこと」とするのが適切だろう。該当部分を訳してみると,「近代国民国家がその多様な人民が要求するものを提供できないこと」といったあたりになる。
少し説明を加えながら下線部を解釈するなら,たとえば「このように同じ民族に属するという意識が復活しているのは,近近代国民国家がその多様な人民が要求するものを提供できないからなのかもしれない」となる。ここで,「直訳か意訳か」という論争にコミットするつもりはない。要するに,英文を見たときにうえのような内容が読み取れるかどうかが問題なのだ。
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