February 18, 2018

文脈に即した語義理解―辞書的解釈を超えて

 readinessを英和辞典で引くと,「進んで~すること」のような語義が見つかる。しかし,この訳語を見ると,する側の積極性が読みとれるわけであるが,次の引用例のような場合,そのような解釈ははたして適切であろうか。


"Overreaction" also comes from the experience that people have had with loss in the past. When old losses haven't been adequately dealt with, a sort of transition deficit is created―a readiness to grieve that needs only a new ending to set it off. (William Bridges, Managing Transitions: Making the Most of Change, Amazon Kindle版位置No.711)

適切な解釈に到達するためには,この名詞化のもとの形であるready to Vに戻って考える必要があるだろう。この形に戻って英和辞典を引いてみると,readinessだけでとらえていたときとは違う理解のしかたが示されているのに気がつく。たとえば『ルミナス英和辞典』の記述をbe ready to Vという形に注目して検討してみると,「今にも…しようとして; すぐ…しがちで」という語義が見つかる。これをもとにreadiness to Vの意味を考えてみると,「すぐにVしがちであること」という理解にたどりつけるであろう。この理解をもとに,上の引用例の下線部も,「すぐに深く悲しんでしまう心の状態」のように理解できるであろう。

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放送大学大学院入試―安易に考えてはいないか?

 すでにこのブログでも解説しているが,放送大学大学院に修士号取得を目指す修士全科生として入学するためには入試がある。まずはこの点をしっかり認識しておく必要がある。というのも,放送大学の教養学部は資格条件を満たしていれば誰でも入学可能なので,大学院も同じだと考えている人が多いようだからだ。
 さて,この入試であるが,一部のプログラムを除いては筆記試験に英語が含まれている。まずは公式サイトの過去問題を見て確認してほしい。院試塾の過去の指導経験から言っても,基礎からの学習が必要な人が多い。院試塾の「放送大学大学院トータルサポートパック」では,このような人が多いと想定して,高校英語レベルの読解文法から学習する「英文読解スーパーベーシックゼミ」に「大学院入試英語基礎講義」をセットにした「大学院入試英語入門プログラム」を英語講座としてセットにしている。過去問題の指導については別途,「放送大学大学院入試英語演習」で対応しているが,過去問題を確認してみるとわかるように,著作権の関係で本文が非公開とされているものも多く,注意が必要である。
 英語以外の筆記試験は小論文形式のものが多い。小論文だからと安易に考えている人が多いようだが,多くの人は小論文のきちんとした書きかたを知らない。ただ知識があれば書けると考えている人があまりに多いのである。院試塾では「大学院入試小論文指導」で大学院入試の小論文指導を行っているが,最初の段階でかなり苦労する人が多い。上述の「放送大学大学院トータルサポートパック」には,過去問題から最新の2年分の指導が含まれている。
 また,出願の際に提出が求められる研究計画書・志望理由書で苦労する人も多い。おそらく,「研究」について真剣に考えるのははじめて,という人が多いのであろう。ところが「研究計画書」は「研究」の「計画」を書くものであるから,「研究」とはどのようなものであるかは当然理解できていなければならない。つまり,研究そのものについて学ぶことからはじめる必要があるのだ。この学習にはまず,専門分野の概説書を読み,当該分野でどのような研究が行われているかを把握し,概説書で紹介されている専門的研究を選んで読みすすめていかなければならないのである。それなりに時間と労力をかける必要がある。
 また,志望理由書を書くためには,自分が大学院でどのような研究をしたいのか,また,それは大学院修了後にどのような自分になっていたいのかを十分に考え,そのために大学院在学中にどのようなことを身につけなければならないかを正確に検討したうえで,そのために必要な大学院の資源(特に所属教員と開設授業)を見きわめる必要があるのだ。
 このように,放送大学大学院入試に出願して首尾よく合格するためには,多くのハードルを越えなければならない。相当の時間と手間をかける必要がある。安易に考えていてはいけないのである。

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研究計画にインタビュー・アンケートを含める場合に注意すべきこと

 研究計画書を書くときに,研究方法としてインタビューやアンケートを含めようと考えている人はかなり多いのではないだろうか。しかし,院試塾の指導でもよく指摘するのだが,単に「当事者に尋ねてみればわかる」と安易に考えていないことを確実に示す必要がある。というのも,「当事者に尋ねてみればわかる」というのはジャーナリズムにはなっても,学問研究にはなりえないからだ。
 それでは,研究計画にインタビュー・アンケートを含める場合にはどのようにすればよいのか。まず,先行研究でどのような方法を採用しているかを十分確認してみることが大切だ。先行研究で採用されている方法は,すでに学問的な確立しているものであることが確実だからだ。そして,その方法そのものについても学ぶ必要がある。たとえば心理学などでは,さまざまなことがらの評価尺度の開発そのものが学問研究として行われており,学問の世界で標準的な方法として受け入れられているものも多い。また,社会学などではインタビューを多く用いるが,インタビューの方法などにも学問的に確立したものがあって,インタビュー自体の方法を解説する書物なども出ている。
 最初は単なる思いつきでインタビューやアンケートを行えばよいと考えたかもしれないが,単なる思いつきだけでは学問にはならない。先行研究などから学問的な方法論をきちんと学ぶべきだという点では,インタビューやアンケート以外の方法で研究を進めようとする場合とまったく変わりがないのである。

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February 17, 2018

前置詞の意味解釈―比喩的拡張を手がかりに

 英語の前置詞の意味は,空間の意味が基本で,そこからさまざまな意味が「比喩的拡張」によって派生している。たとえば,以前「『回避』の意味を表すaround」で説明したとおり,辞書で「回避」の意味とされているaroundの意味は,空間的意味を基本にしてイメージを広げるとすんなりと理解できる。今回もそのような実例を紹介しよう。


Depression―feelings of being down, flat, dead; feelings of hopelessness; being tired all the time. Like sadness and anger, depression is hard to be around. You can't make it go away, however, People need to go through it, not around it. (William Bridges, Managing Transitions: Making the Most of Change, Amazon Kindle版位置No.774)

下線部のaroundはまさに「回避」の意味である。throughはどうであろうか。このthroughを辞書ではよく「経験」を表すなどと解説しているのだが,はたしてなぜそのようになるのであろうか。throughの基本的意味は「貫通」,つまりある対象物を突きぬけて通っている状況を表すものである。トンネルなどをイメージするとわかりやすいだろう。「経験」とはすなわち,このトンネルを通り抜けて反対側に出ることだとイメージされるので,同じ前置詞throughで表すわけである。
 なお,このような比喩的拡張について詳しく知りたいという人は,田中茂範著『表現英文法』に豊富な解説があるので,一度ご覧になることをお勧めしたい。

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早稲田大学日本語教育研究科

 院試塾で過去に複数の合格者が出ており,志望大学院別の指導を設置している大学院の1つに,早稲田大学日本語教育研究科がある。この大学院の対応指導は「早稲田大学日本語教育研究科提出書類作成指導」で行っている。対象書類は研究計画書(2000字程度)と志望動機に関する作文(1000字程度)である。
 早稲田大学日本語教育研究科にかぎらず,日本語教育関係の大学院全般について言えることなのであるが,現職の日本語教員で大学院進学を目指す人の多くが,仕事を続けていくうえで,あるいはキャリアアップのために修士号が必要だから,という理由で目指しているようである。現実はそうであっても,この考えかたでは合格できる水準の研究計画書や志望動機作文を書きあげることは難しいであろうし,実際,日本語教育関係の大学院進学を目指す現職教員の多くがこの問題に直面する。大学院では学問研究をすることが前提となるからである。
 そこでまずは,志望動機作文を書くことから考えてみよう。ここも誤解している人が多いのだが,「志望動機」とは,志望大学院での研究・学習を希望する直接的な理由である。この中心となる構成要素は所属教員と開設授業である。つまり,この先生の指導を受けて研究したい,この授業でこのようなことを学びたい,という理由を述べるのが適切なのである。
 研究計画書もこの線で考えていくのがよいであろう。すなわち,指導希望教員の研究内容や著作の内容をよく調べたうえで,「この先生のもとで研究をするとしたらどんなテーマで研究しようか」と考えるわけである。また,研究計画書の内容を考えるうえでは必ず先行研究が問題になるが,これもその教員の著作を中心に,そこに挙がっている参考文献を順に探索していくのが適切なのである。
 上記の書類などを提出して出願するわけだが,国外から出願する場合(日本人も含む)には「国外課題」および「ビデオプレゼンテーション」の提出が必要となる。国外課題は2000字程度1題と1000字程度3題の計4題で,筆記試験の小論文問題のような内容が出題される。また,ビデオプレゼンテーションは10~20分程度で志望動機・研究計画を志願者本人が説明するようすを上半身が映る状態で録画したものをCD-RあるいはDVDに記録して提出する。院試塾では,国外課題については「大学院入試小論文指導」で,ビデオプレゼンテーションについては口頭試問・プレゼンテーション指導」で対応している。
 また,国内から出願する場合には,筆記試験が課される。この問題も公式サイトで公開されているが,「日本語教師の『専門性』をどのようにとらえるか,あなたの考えを述べなさい」のような小論文形式の出題である。
 早稲田大学日本語教育研究科の次の出願は4月上旬である。この時期の出願を考えている人はそろそろ準備にかかるべき時期だ。

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February 16, 2018

学問的態度を身につける―よくない習慣をunlearnすることの大切さ

大学院入試を機会に役に立たない習慣をunlearnしよう!という記事では,「受かる思考習慣」を身につけるためには古い思考習慣を捨て去る(unlearnする)ことの重要性について説いた。今回の記事では,人生や組織の転換期をうまく乗りこえるための考えかたを解説する書物から,この点についてきわめて明確かつ簡潔に語っていると思われる箇所を見つけたので,紹介しておきたい。


Before you can begin something new, you have to end what used to be. Before you can learn new way of doing things, you have to unlearn the old way. Before you can become a different kind of person, you must let go of your old identity. Beginnings depend on endings. The problem is, people don't like endings. (William Bridges, Managing Transitions: Making the Most of Change, Amazon Kindle版位置No.626)
【試訳】
何か新しいことをはじめる前に,その前のものは終わらせなければならない。ものごとの新しいやりかたを身につける前に,古いやりかたは忘れなければならない。違う種類の人間になるためには,古い自分は捨てなければならない。はじまりには終わりが必要なのだ。問題なのは,終わりを好きな人はいないということなのだ。

まさにこのとおりなのである。

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February 15, 2018

大学院入試英語の学習に必要な期間

 脅すようなマーケティングは好みではないし,勉強は脅されてするものではないとも考えているので,あまりこういうことは言いたくないのだが,甘く考えて失敗する人があまりに多いのであえて言いたいと思う。大学院入試英語の学習には,かなりの期間が必要である。特に基礎レベルから学習を開始する場合,10か月~1年間程度は見こんでおいたほうがよいのではないかと思う。ところが,3か月くらいでなんとかなると考えている人があまりに多いようで,このギャップが原因で大学院入試に失敗してしまう人が多いのである。
 院試塾の大学院入試英語講座でもっとも基本的なレベルから学習を開始するのが「英文読解スーパーベーシックゼミ」である。内容としては高校英語レベルの読解文法の学習を単文レベルで行うものなのだが,これでも苦労する人がけっこう多く,標準学習期間の2か月で修了できる人はそう多くない。
 これに続く講座は,数行の大学院入試英文に,紙上講義を読んだうえでとりくむ「大学院入試英語基礎講義」なのだが,ここの移行にもけっこう苦労する人が多い。「英文読解スーパーベーシックゼミ」の内容が確実に身についていないと,この講座の内容をこなしていくのは難しい。ただ漫然と学習を進めるだけでは不十分なのである。このように,英文読解は知識を身につけてもそれを実際の英文に対して正確に運用できるようになるのにはそれなりの「定着期間」が必要になる。知識を身につけたらそれでOK,とはならないのである。なお,この「大学院入試英語基礎講義」の標準学習期間も2か月で,つまり「英文読解スーパーベーシックゼミ」から4か月はかかると見こんでおくべきなのである。
 これ以降は志望系列によって進むべき講座が異なるが,院試塾で設定しているパック・プログラムを紹介すると,たとえば志望系列を限定しない「大学院英語基礎力養成プログラム」,「心理学英語スターターパック」「基礎からのメディカル英語パック」のいずれもここから標準学習期間6か月の講座を組みあわせている。つまり,「英文読解スーパーベーシックゼミ」からはじめて、順調に進んだ場合でも10か月の期間が必要ということなのだ。

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外国語の文章がきちんと読めていないとはどういうことか

 外国語の読解能力のない人が外国語文を「読む」というとき,自分にわかる部分だけを都合よくつなげただけ,ということが実に多い。いうまでもなく,そのような読みかたでは内容がきちんとわかるわけはないのである。ちょうど下の引用で述べられているような状況になっているのではないだろうか。


 ともあれ,私はなにぶんサトってしまったものだから,あらゆることに怠惰になり,目も両方あけているのはムダなので片一方だけ開けていた。チーフ・オフィサーがドイツの漁業調査船アントン・ドルン号の説明書を持ってきて訳してくれという。私は,何を隠そう自分はサトリをひらいたから,さようなくだらぬことは今後一切しないと断った。
「どうもサトリなんぞひらかれて弱ったものだなあ」と彼がしきりにぼやくので,私はついそれを受取って開いてみると,どうしてこれが難物である。三位電流とかなんとか特殊用語にみちみちているうえ,船の上甲板には絞首台(ガルゲン)なんぞがついている。いくらなんでも船に絞首台なんかあっては変だからどうせ専門用語なのだろうが,そんなものをいちいち調べていては大変である。私は「いいですか,完全な直訳をするからあとで勝手に直しなさいよ」と言っておいて,暗室(ドゥンケルチンメル)なんぞも陰鬱な部屋と訳し,エンジン・ルームの面倒な機械などはすべてとばしてしまった。この船はすぐれた調査船で,さまざまな化学実験室をそなえ,医者にもちゃんと助手がついているし四ベッドを備えた病室まである。しかし私の訳によれば,ひとかけらの推進装置も有さず絞首台やら薄暗き部屋にみちみちているので,さすがドイツの誇る最新調査船アントン・ドルン号もあわれ幽霊船のごとくなってしまった。(北杜夫『どくとるマンボウ航海記』Amazon Kindle版位置No.1936-45)

 いい加減に読んで訳すと,このように原文の意味とはずいぶんずれた解釈になってしまうのである。

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February 12, 2018

resourcesの語義―「資源」と決めつけない!

 これまでにこのブログで何度か,resourceという語の語義を検討してきた。それは,この語が定訳の「資源」ではとらえきれない意味をもっているからだ。今回もこのようなresourceの実例を検討していこう。


The general manager of the service unit brought in a service consultant, who studied the situation and recommended that the unit be reorganized into teams of people drawn from all three of the levels. (This reorganization is what in the last chapter I called the change.) A customer would be assigned to a team, and the team would have the collective responsibility of solving the customer's problem. Each team would have a coordinator responsible for steering the customer through the system of resources. Everyone agreed: the change ought to solve the problem. (William Bridges, Managing Transitions: Making the Most of Change, Amazon Kindle版位置No.426)

下線部のresourcesを「資源」と解釈してみたところで,あまりピンとはこないのではないだろうか。英英辞典の定義を見てみよう。COBUILDでresourceを引くと,The resources of an organization or person are the materials, money, and other things that they have and can use in order to function properly.という語義が最初に挙がっている。この語義と上の引用例の内容とを考えあわせると,下線部のresourcesは「解決手段」といった意味であると判断することができるであろう。『リーダーズ英和辞典』には「方策」といった訳語が挙がっているが,これに近いと考えてよいであろう。

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February 06, 2018

知識を総動員する英文読解

 英文を正確に読むためには,表現や構文などの知識を総動員して取りかかる必要がある。そのような実例を紹介し,読みかたを確認していこう。


[A]Second thoughts can turn one's thirties into a difficult time. It is often the first time of transition after leaving home when a person feels [B]real doubt about the future. It can also be a very lonely time, because the very people that one would normally talk to about personal problems may be the people that one is [C]having second thoughts about. (William Bridges, Transitions: Making Sense of Life's Changes, Amazon Kindle版位置No.567)

下線部[A]の文はどのような意味を表しているのであろうか。単に直訳して,「2番目の思考が30代を困難な時期に変える」では意味不明である。正確な読解の中心となるのは,second thoughtsがこれで慣用表現になっている点を正確に見ぬくことができるかどうかである。これに気づくためには,下線部[C]のhave second thoughts about ~に注目するのがよい。これを辞書で成句として調べてみると,たとえば『ルミナス英和辞典』では,「決心がつかない,二の足を踏む」という意味であるとの記述がある。また,これとの関連で目につくのが下線部[B]のreal doubtではなかろうか。この流れから,下線部[A]の文は,「決心がつかないからこそ30代は困難な時期になりえるのだ」という意味であると理解できるのである。

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