January 04, 2012

辞書での情報の見つけかた

 辞書をただ漫然と「見て」いるだけでは,適切な情報を引き出すことはできない。さまざまな手がかりから求める情報を積極的に探していく必要がある。その方法の一端を紹介しよう。


People use some microbes to make food. Yeasts are microbes that people use to make bread. When yeast is mixed with flour, salt, sugar, and water, it feeds on the sugar and makes carbon dioxide and other substances. The carbon dioxide makes the bread become bigger and lighter. When the bread is cooked, the other substances help to flavor it. (Oxford Read and Discover: Cells and Microbes, p.33)

下線部のlightをどのように解釈すればよいか。まず,「軽い」では文脈に合わないことを確認する必要がある。パンが発酵でふくらんでも,「軽く」なるわけではない(比喩的に理解できないわけでもないが,やはりずれると考えるべきだろう)。ここで「何だかおかしいな」と気づくことで,辞書を引いて確かめようという気持ちになる。
 英和辞典を見ると,たとえば『ジーニアス4』では,「〈パンなどが〉よくふくれた」というのが見つかる。この「〈パンなどが〉」に着目するのがポイントである。このような情報に目がいけば,求める情報を見つけ出すことができる。『オーレックス英和辞典』でも「〈パン・ケーキなどが〉(空気を含んで)ふわっとした,軽い」というのが見つかる。the bread become bigger and lighterは「パン生地がふくらんでふんわりする」と解釈すればよいだろう。
 OALD8LDOCE5などでは,形容詞の語義を関連する名詞によって分類していることがある。このlightの場合もFOODというラベルがついていて,たとえばLDOCE5では11番の語義にこれがついている。cがここでの意味で,food that is light contains a lot of airとなっている。

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訳語と「文脈」

 外国語の語句に訳語をあてる場合,ただ辞書を引いて出てきたものを充てればよいというものではない。これは多くの人が「頭では」わかっていることだろう。しかし,実際に英文和訳の指導をしていると,かなり初歩的な部分でもうまくできない人が多い。今回は,簡単な例を挙げて,この過程を少し具体的に見ていくことにしよう。まずは例文から。


Some different tissues work together to make organs. Organs are important parts of the body, and they do amazing jobs. Eyes are organs that animals see with. Roots are organs that help plants to grow in soil. (Oxford Read and Discover: Cells and Microbes, p.7)

 この文章のorganにはどのような訳語を充てるのがよいだろうか。英和辞典(『ジーニアス4』)を引くと,1aに「器官;臓器」とある。この2つのどちらがこの文脈では適切だろうか。結論から言うと,「器官」が正しく「臓器」は誤りである。なぜか? それは,ここでのorganが動物だけではなく植物のものも含めて指している(上記引用の最終文)からだ。
 もちろん,このような判断をするためには,日本語で「器官」と「臓器」とが異なるものを指す場合があることを理解しておかなければならない。国語辞典(『明鏡』)を引いてみると,「器官」は「生物体を構成する一部分。いくつかの組織が集まって固有の携帯をつくり,一定の生理作用を営むもの」としてあり,これに対して「臓器」は「内臓の器官。肺・胃・腸・肝臓・腎臓(じんぞう)など」となっている。少しわかりにくい部分もあるが,この2つを見比べただけでも,植物についても言う場合には「器官」のほうが適切だという判断は可能であろう。
 少し専門的な辞典も引いてみると,さらに理解が深まることがある。いくつか引いてみたところ,『医学英和辞典』には「器官《動物の心臓・腎臓, 植物の根・葉・雄しべなど, 独立性をもちながら固有の機能を担う生物の体の各部分》, 臓器」とある。これを見れば,この文脈では「器官」が適切であると自信をもって判断できるわけだ。
 なお,『ジーニアス4』の「器官;臓器」という表記にも,ついでながら注目しておきたい。2つの語がカンマではなくセミコロンで区切られている。これは,訳語ではなく語義を区切っていることを意味する。つまり,「器官」と「臓器」は単なる訳語の違いではなく,語義の違いだと言っているのである。

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November 28, 2011

Sence of Wonder(続)

 他の本に浮気をしてしまってなかなか読み終わらない,Howard Gardnerの5 minds for the Futureに,やはり子どもの知的好奇心に関する記述が出てきたので,紹介したい。


 Members of one age group need little pressure to assume the creative stance―young children before the age of formal schooling. Given even a modestly supportive environment, youngsters are not only intrigued by a wide range of phenomena, experiences, topics, and questions; they persist in exploring, even in the absence of encouragement, let alone material rewards. Few are the children who are not galvanized by a trip to a county fair, an amusement park, or a children's museum; their playfulness, curiosity, and imaginative powers are palpable. The mind of the five-year-old represents, in one sense, the height of creative powers
 Accordingly, the challenge to the educator is to keep alive the mind and the sensibility of the young child. Artists and scientists have always known this: Pablo Picasso famously declared, "I used to draw like Raphael; it has taken me my whole life to learn to draw like a child." Wtih equal conviction (and equal quotability), Isaac Newton reflected, "To myself, I seem to have been only like a boy playing on the seashore and diverting myself in now and then finding a smoother pebble or a prettier shell than ordinary while the great ocean of truth lay all undiscovered before me." (p. 84)

この本でGardnerは,徹底した学問の訓練が必要であるとも説いているから,全体としては単に放任主義をすすめているわけではない。しかし,こと創造力については,子どものような好奇心や感受性などを持ち続けることが重要であると説いている。特にPicassoの場合には,絵画を学ぶ過程で身につけたものをいったんunlearnする必要がある,とまで言っているのだ。
 引用の第1段落では,子どもの創造力や好奇心は励ましてやったりごほうびをあげたりしなくても,それを支えてやる環境があれば十分だ,とも述べている。第2段落の内容も関連づけて考えると,「教育が下手に手を出さない」ことが大切だ,と言っているように読める。
 だからといって,Gardnerが放任主義をただ信奉しているのではないことは,すでに述べたとおりである。creative mindは5 mindsの3つ目なのだが,これまでにdisciplined mind / synthesizing mindについて説明しており,特に前者については徹底した訓練の必要性を説いている。1つの分野を徹底して学ぶことと子どもの好奇心や感受性を持ち続けることが,いわば両立する必要があるわけだ。たとえば学問について言えば,1つの学問分野に精通しつつ,子どものような素朴な疑問をきちんと持てることが大切なのではないか。Stephen Hawkingなどはこの代表例と言えるかもしれない。
 Gardnerは創造力と1つの分野を徹底して学ぶことの関連について興味深い記述をしている。

At the time, China and the United States represented polar opposites. On the street, messages of creativity were rampant in the United States of the go-go eighties―in business, the media, technology, the arts. Everyone wanted to be creative: too many persons believed that they were creative, even though they had scarcely begun to master a domain, and even though no expert in the field would have judged them as creative. In schools (and in after-school sites), the compelling need was for the achievement of genuine mastery of a recognized discipline: not only was there no need for educators to wave the flag of creativity; it might even have been counterproductive to do so. Only through the honing of discipline would genuinely creative options ultimately emerge. (p.85, emphasis mine)

強調部分の内容は,こんにちの日本にも当てはまるのではないかと思われる。単なる「思いつき」と「創造性」のはき違え,とでも言えばよいだろうか。真の創造性が発揮されるための前提として,その分野をまずはきちんと習得している必要がある,というのが,ここでのGardnerの主張である。
 ぼくなりの解釈を加えると,PicassoはいったんRaphaelのように絵を描くことを習得して,もう一度子どもの心を「取り戻した」のであって,それは子どものお絵かきとまったく同じなわけではない。Newtonにしても同じで,それまでの物理学(自然哲学)をきちんとふまえたうえで,子どものような好奇心を持って現象を見たのである。素朴な疑問を持つことは大切だが,それに対する答えまで素朴であってよいというわけではないのだ。どうも今の日本の教育は,ここをはき違えているように思えてならない。

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November 27, 2011

『今日からはじめるTOEFL(R) TEST総合対策』

 ついに自分の名前の入った本が出たので,紹介したい。署名からもわかるとおり,TOEFLの学習書だ。新星出版社から出ている。
 書きはじめたのは2008年夏で,出版までに3年以上かかった。途中で一度企画変更があって3分の1程度を書き換えたり,震災の影響を受けたりしたこともあって,これだけの歳月を要した。
 第1章「セクション概要」では,Reading / Listening / Speaking / Writingの4つのセクションの概要とiBTの操作説明をしている。第2~5章がそれぞれのセクションの問題形式の解説と,確認テストとしての「ミニ模試」となっている。 ここまでは,TOEFLを受験したことのない人がテストの形式を知り,どの程度の実力が必要であるかを確かめるための,学習書としては標準的な内容だろう。
 第6章では「アカデミック英語」として,「主張などを表す名詞」,「『証拠』という意味の名詞など」や「原因・理由の接続表現」などの項目ごとに,ぜひ知っておくべき語句・表現を,例文と簡単な解説を交えて紹介している。これらをマスターすることで,読解力・表現力がアップするように,という意図がある。
 そして最後の第7章「分野別長文資料集」では,読解用の長文資料と,分野別の単語を掲載している。単語のほうは「頻出」というものではなく,それぞれの学問分野の紹介を兼ねて概念を英語で説明している。
 問題文や長文資料も含めてほとんど自分で書いた。TOEFLだけでなく,学問の英語を学びたい人にぜひ手にとってほしい本だ。

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November 18, 2011

Sense of Wonder

 理想論を少々述べたいと思う。
 学問でいちばん大切なものは何か。「疑問を持つ純粋な気持ち」だとぼくは思う。「子どものように」と付け加えてもよいかもしれない。素朴な疑問から出発して,その答えを求めて本を読んだり考えたりする。これが学問というものだろう。過剰な理想論だと言われようが,ぼくはそう信じているし,自分自身,そのように学問をしてきた。
 Rachel Carsonがその名もずばりThe Sense of Wonderという本を書いている。一節を引用しよう。


A child's world is fresh and new and beautiful, full of wonder and excitement. It is our misfortune that for most of us that clear-eyed vision, that true instinct for what is beautiful and awe-inspiring, is dimmed and even lost before we reach adulthood.

学問を続けられる人というのは,すべてそうだとは思わないが,多くがこのtrue instinct for what is beautiful and awe-inspiringを持ち続けている人だと思う。
 ここには1つ,とても残念なことも書いてある。それは,こうした気持ちが大人になる前に弱くなったり失われたりする,ということだ。
 それでは,どうすればよいのか。Carsonは「感じること」が特に大切なのだと説く。

I sincerely believe that for the child, and for the parent seeking to guide him, it is not half so important to know as to feel. If facts are the seeds that later produce knowledge and wisdom, then the emotions and the impressions of the senses are the fertile soil in which the seeds must grow. The years of early childhood are the time to prepare the soil. Once the emotions have been aroused―a sense of the beautiful, the excitement of the new and the unknown, a feeling of sympathy, pity, admiration or love-then we wish for knowledge about the object of our emotional response. Once found, it has lasting meaning. It is more important to pave the way for the child to want to know than to put him on a diet of facts he is not ready to assimilate.

もちろん,学問という営みそのものはあくまで冷徹に,事実に忠実に論理的にすすめていくべきものである。しかし,その営みの原動力となるのは,「不思議だ」「すごい」と感じる気持ちなのだ,というのが上の引用の内容だと言ってよいだろう。
 子どもがこうした気持ちを持ち続け,その気持ちをさらに育むためには,周りの大人,特に親の影響が重要であることは言うまでもない。だからCarsonも,上の引用でfor the child, and for the parent seeking to guide himと言っている。
 ぼくが敬愛してやまないCarl Saganも,TVシリーズCosmosの中で,以下のように述べている。

Every one of us begins the life with an open mind, a driving curiosity, a sense of wonder. ("The Backbone of Night")

a driving curiosityという表現が,ぼくにとってはすごく心に響く。「何かをせずにはいられないほどの好奇心」ということだ。残念ながら多くの大人は「さめて」しまって,この気持ちをなくしてしまっている。たとえば大学院入試の研究計画書を書くときにも,本当にそのことに興味があるなら今すぐにでもできることからはじめるはずなのに,大学院入試も大学院での研究も,「手段」としてしか見ず,「そんなことは入ってから考える」と片付けてしまってはいないか。それは,本当に学問をしたいという気持ちではない。
 Saganもやはり,子どもがそうした気持ちを持ち続ける上で,周囲の大人の役割が大きいと考えていて,上の引用のすぐ前で以下のようにも言っている。

As a child, it was my immense good fortune to have parents and a few teachers who encouraged my curiosity.

これはぼく自身の経験についても言える。子ども向け百科事典や図鑑を揃えてくれたりして好奇心を満たすことを教えてくれた両親や,英語やその他の学問のおもしろさをおしえてくれた先生に出会うことができた。Saganの発言で悲しいのは,そうしたことがimmense good fortuneだ,といっている点だ。
 子どもが「そんなことが何の役に立つのですか」と教師に質問する,などと言われるが,言わせているのは周りの大人であり,社会である。「社会のせいだ」という責任論を展開したいのではない。子どものこうした発言は,大人の社会の状況を何らかの形で反映しているのではないか,と言いたいのだ。まずは大人が,sense of wonder,a driving curiosityを取り戻すこと,そして自ら実践していくことが大切ではないか。
 蛇足ながら,大学院入試に向けて準備をする際にも,このような気持ちがきわめて大切だと思う。まずは自分が心から「知りたい」と思えることを見つけてほしい。

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November 14, 2011

放送大学大学院入試の基礎知識

 放送大学はその名のとおり,テレビ・ラジオによる放送授業を中心に教育を行う大学で,イギリスのThe Open Universityを手本としたものと言える(現在の英語での大学名も,The Open University of Japan)。この放送大学には,大学院修士課程(文化科学研究科文化科学専攻)もあり,6つのプログラムが設置されている。
 この放送大学大学院で修士号取得を目指すためには,「修士全科生」として入学する必要があり,そのためには入学試験がある。学部のほうは入試がないために,放送大学大学院に入学したいと思って調べてみると,入試があるのでちょっと面食らった,という人もいるようだ。
 放送大学大学院の入試は年1回のみで,以下のようなスケジュールで実施される(参考:平成24年度募集要項)。9月の出願のチャンスを逃すと1年間待たなければならない。


  • 出願:8月末~9月上旬ごろ(※研究計画書1000字程度,志望理由書700字程度を提出)

  • 第1次選考(筆記試験):10月上旬ごろ(学習センターにて実施)

  • 第2次選考(面接試問):11月下旬ごろ(本部と千葉学習センターにて実施)


 6プログラムの平均競争率は2.5倍で,最低が文化情報学プログラムの1.2倍,最高が臨床心理学プログラムの13.8倍となっている。臨床心理学プログラムは第2種指定校となっているが,かなりの「狭き門」だ。
 受験を考えている人が最初に苦労するのが,出願時に提出しなければならない研究計画書と志望理由書だ。直前に願書を取り寄せてはじめて知る,という人も多い。募集要項の配布開始は毎年6月中旬ごろだが,こういう書類を書いたことがない人にとっては,そこから始めてもたいへんなものである。院試塾ではこの点をふまえ,すでに来年度の出願に向けて「放送大学大学院研究計画書ゼミ」を設置している。放送大学大学院に行きたい,という人は,ぜひ早めに着手することをおすすめしたい。
 従来は書類だけで第1次選考が行われていたが,今年度から第1次選考が筆記試験となった。だからといって,研究計画書・志望理由書が重要でなくなったわけではない。他の大学院と同じようになったというだけである。
 第1次選考の筆記試験はプログラムごとに問題が異なる。800字の小論文形式が多く,プログラムの対象領域をさらに細分化した選択式になっている部分もある。さほど突っ込んだ専門知識はあまり問われていないが,大学院入試小論文の訓練はしっかり積んでおく必要がある。また,自然環境科学・臨床心理学以外のプログラムでは,英語も出題される(文化情報学プログラム以外では英和辞典の持込可)。こちらの準備もある程度必要だ。なお,過去3年分の筆記試験問題がウェブで公開されている。
 第2次選考の面接試問は「提出された研究計画書,志望理由書等をもとに面接試問を行い,『研究遂行能力,意欲など』を判定」する,となっている。
 すでに述べたが,直前になって慌てる人が,残念ながら多い。放送大学大学院に関心がある人は,ぜひ早めに情報収集を始め,準備に着手してほしい。

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November 11, 2011

英文の論理展開―子ども向け科学読みものに学ぶ

 Oxford University Pressから,Oxford Read and Discoverという,子ども向けの科学読みもののシリーズが刊行されている。ちょっとした仕事に必要で何か易しい読みものを,と探して見つけたものだ。600語レベルのLevel 3から1,050語レベルのLevel 6までの4段階が設定されており,分野はThe World of Science & Technology,The Natural World,The World of Arts and Social Studiesの3つがある。言い回しは全体に易しく,説明文も読みやすいが,内容はなかなか充実していて,日本の中学・高校生はもちろん,大学の基礎レベルでも十分に教材として使えるものだ。
 とりわけ,英文の基本的な論理展開を理解するうえで,子ども向けの記述スタイルは役に立つ。というのは,展開形式が比較的単純で把握しやすいからだ。今回はこの点に注目し,Level 3のLife in Rainforestsの引用から学んでみることにしよう。
 まずは段落内部の論理展開から見ていこう。"Plants"という章の1段落である。


We can make things from rainforest plants, too. People [1]make clothes and bags from pinapple leaves. We also use some plants to [2]make medicines. We can use some rainforest trees, like the balsa tree, [3]for wood. We can use the rubber tree for latex to [4]make rubber. (p.8)

注目したいのは,「1パラグラフ1トピック」の原則が見事なまでに貫かれている点だ。トピック・センテンスで提示した内容を,それ以降の4つの文でぶれることなく展開している。特に,トピック・センテンスのmake thingsというキー・フレーズの具体例が,後続の4つの文で提示されている。以下の図で確認してほしい。展開が複雑になってくると,必ずしもこのような図で示せるとはかぎらないが,この段落ではきれいに図示することができる。特に段落の展開を意識して学習する初期の段階では,このようなものから入るのが望ましいと言えるだろう。

Paragraph1

 続いて,複数段落の論理展開を見ていくことにする。Rainforest Layersという章で,熱帯雨林がどのように層をなしているかを解説する文章である。


Tropical rainforests have layers. The top layer is the emergent layer. The tops of the tallest trees are in this layer. It's very windy! Eagles and bats live here.

The next layer is the canopy. The big branches and leaves of the tall trees are here. There are many types of animal in this layer, because there's light ad lots of food. Monkeys and toucans live in the canopy.

The next layer is the understory. The tops of the small trees are in this layer. It's dark and hot. Jaguars and tree frogs live here.

The bottom layer is the forest floor. The roots of the trees are in this layer. Many insects live on the forest floor. Some big animals like anteaters live here, too. They eat the insects. (p.7)


まずここでは,複数段落で1つの大きなトピックを展開する場合の原則を確認することができる。それは,最初の段落で大きなトピックとそのサブ・トピックを提示し,2つ目以降のサブ・トピックはその後1段落ずつで展開する,というものだ。上の引用では,第1段落第1文が大きなトピックで,第2文が最初のサブ・トピックである。第2段落以降では,それぞれ最初の文がサブ・トピックを提示している。また,第1~4のそれぞれの段落で,サブ・トピックを示す文の内容が展開されている。
 サブ・トピックの展開も明快である。それぞれのサブ・トピックについてはまず,トピック・センテンスでそれぞれの名称が提示される。その後には,それぞれのそうが植生のどの部分に当たるかが説明される。その後の展開には段落ごとにややバリエーションがあるが,共通しているのはそれぞれの層にどんな動物がすんでいるかの説明だ。さらに,第1段落のIt's very windy!,第2段落のbecause there's light (and lots of food),第3段落のIt's dark and hot.のように,それぞれの層の主に気象に関する情報を示す部分が入る場合もあり,その部分は動物の具体例の前に置かれている。それぞれの段落の論理展開の構造がほぼ同じになっており,読みとりやすくなっている。
 このような文章を論理展開に十分注意しながら読むことで,パラグラフ・ライティングの基礎がつかめるだろう。また,リーディング力向上にも大きく役立つものと思われる。特に,論理構造に注意しながら,字数を変えて要約する訓練が有効ではないだろうか。たとえば,上の引用を30字以内で要約すると以下のようになる。

【要約例①】
熱帯雨林には,超高木層,林冠層,低木層,林床の4層がある。

この例は,主トピックとサブトピックの内容だけをまとめたものである。
 これが100字以内になると,サブトピック+植生の説明で要約を作成すればよい。

【要約例②】
熱帯雨林には4つの層がある。いちばん上は高い木のてっぺんに当たる超高木層,次に高い木の大きな枝や葉のある林冠層,続いて低い木のてっぺんに当たる低木層,そしていちばん下が木の根がある林床である。

 さらに字数を増やすときには,それぞれの層にすむ代表的な動物に関する記述を加えればよい。
 もちろん,これを形式的にあらゆる文章に当てはめられるわけではないし,そうした考えかたは望ましいものではない。しかし,このように明快な展開の文章で基礎訓練を積み,次第にさまざまなバリエーションに慣れていくことは有益であるだろう。

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November 04, 2011

国際教養大学の英語・英語小論文

 国際教養大学の2次試験では,A・B日程で「英語」,C日程で「英語小論文」が課される。いずれも他の大学の入試英語とはかなり違う独特のもので,「英語」では2~3ページの英文を読ませ,その内容に関連するエッセイを250語以上で書く。「英語小論文」は資料文がなく設問のみで,やはりエッセイを書かなければならず,分量は300~500語となっている。試験時間はA・B日程が120分,C日程が90分。一般的な国公立大学2次試験の,いわゆる自由英作文では100~150語くらいが標準的なところだから,かなりの長文を書くことになる。だいたいで言うと,TOEFL iBTのライティング問題1題分。
 このような入試問題を出題するのは,入学後の勉学を強く意識しているからだと考えられる。まず,ほとんどの授業は英語で行われる。「英語で行われる」というのは,単に講義が英語で行われるだけではなく,提出物も試験・レポートも全部英語で,ということであろう。もちろん,教科書やその他の配布物もそうであると思われる。余談になるが,ぼく自身が筑波大学の1年で受けた「英語II」(英会話)の授業は,日本人の先生(ある著名な日本語統語論の専門家)から習ったが,教科書はCambridge Textbooks in Linguisticsの1冊であるLogic in Linguisticsで,授業を英語で行い,レポートも英語で書いた。こういった授業がほとんどすべて,というのが国際教養大学なのである。
 だから,本気で入学を考え,そのために勉強を進めるのであれば,「対策」というケチな発想はまず捨ててほしい。もちろん入試に合格することは大切だが,今から学ぶことすべてが,大学入学後の勉学に必要不可欠なツールである英語をしっかりと身につけることにつながるのだ。
 院試塾では,ぼく自身のTOEFL iBT書籍の執筆経験,大学院での英語講読・英作文・英会話(特に,英会話はすべて英語で授業を行う)やこれまでの大学入試指導経験をふまえ,「国際教養大学入試英作文(エッセイ・ライティング)添削講座」を設置し,すでに申込受付をはじめている。この記事では,入試の内容を簡単に紹介するとともに,必要な学習について説明したい。

試験の内容



  • A・B日程
    英語の資料文(2~3ページ)を読み,その内容に関連する250語以上のエッセイを書く。エッセイは,自分の考えや具体例を含むオリジナルなものであり,かつ,指示にしたがって資料文の内容とも十分関連づけなければならない。

  • C日程
    英語による設問指示にもとづき,300~500語のエッセイを書く。


これまでの出題内容



  • 2011年度入試


    • A日程
      資料文:日本・中国の若者が,パソコンや携帯電話に頼らなければ漢字が書けなくなりつつある現状の記述と,それに関する意見などを解説するもの。(出典:新聞記事)
      設問:若い日本人にとってこれが問題だと考える場合にはどのような対策を講じるべきか,問題ではないと考えるのであればその根拠を述べるもの。

    • B日程
      資料文:異文化コミュニケーションにおいて,ノンバーバル(非言語)コミュニケーションが果たす役割とそこから生じうる問題点を解説するもの。(出典:学術英文読解の教科書収録の解説文)
      設問:日本人どうしのノンバーバル・コミュニケーションについて述べたうえで,外国人が日本人とコミュニケーションをとるうえでの注意点を提案し,その根拠を述べるもの。

    • C日程
      核家族化のトレンドをふまえ,10年後の日本社会がどうなっているか,特に両親と兄弟以外の親族とのふれあいが残っているかどうかについて,具体例や根拠を含めて述べるもの。


  • 2010年度入試


    • A日程
      資料文:人間が自然を変えて利用することの必要性や問題点と,相互の依存関係を説明するもの。(出典:概説書)
      設問:人間の文化や繁栄が必要とするものと,自然保護とのバランスをとる方法を3つ説明させるもの。

    • B日程
      資料文:移民が国家の独自性に対して悪影響を及ぼすという主張を紹介したうえで,移民の必要性や利点を解説するもの。(出典:国連開発計画の報告書)
      設問:日本は移民にどう対処すべきかについて,移民の利点や問題点を論じるもの。

    • C日程
      テクノロジーは教師にとって代わることができるか,それとも教師はテクノロジーがはたせない役割を果たし続けることができるかを述べさせるもの。



 詳しくは過去問題を赤本などで確認してほしいが,上記の簡単な説明を見ただけでも,英語「で」書かれた文化や社会の問題の説明文を短時間で的確に読みとり,それに対する自分なりの考えを,やはり英語「で」述べることが要求されていることがわかる。

試験での解答作業の進めかた


 実際に試験問題を解く際には,以下のように作業を進めていくことになるだろう。

  1. 資料文の読解


    • 資料文を読みながら,段落ごと(新聞記事のように形式段落が細かく区切られている場合には,より大きな意味段落ごと)に,筆者がいちばん言いたいことを抽出する。できればマインドマップや簡単な図解にまとめて,あとから手早く参照できるように準備することが望ましい。


  2. エッセイの構想を立てる


    • 設問指示にしたがって,まずは自分の主張を簡潔に1文にまとめる。これが全体のトピックとなる。

    • 設問指示で提示することを求めている根拠や具体例の核心を,それぞれ1文ずつにまとめる。多くの場合,3つ提示することが求められているので,3文を作ることになる。


  3. エッセイを実際に書く


    • 構成はIntroduction→Body(複数段落でもよい)→Conclusionの3段構成とする。Introductionを全体のトピックセンテンスで,Bodyの各段落を3つの要素のトピックセンテンスではじめるのが基本。

    • 各段落では,トピックから外れたことを書かないよう,十分注意する。1パラグラフ・1トピックは,英文ライティングの基本中の基本。

    • Conclusionでは全体の内容を総括し,そこから自分の主張が導けることを強く印象づけるようにする。



 以上,受験生の参考になることを願っている。

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November 01, 2011

専門職大学院と学習計画書

 最近の専門職大学院では,「研究計画書」ではなく「学習計画書」の提出が求められることがある。院試塾では,「研究計画書作成指導」で,学習計画書にも対応している。この「学習計画書」とはいかなるもので,何を書けばよいのだろうか。
 もちろん,ごく簡単に言うなら,大学院入学後の「学習」の「計画」を書けばよいわけである。「研究」が何か新しい知見を生み出すことを目標としている必要があるのに対して,「学習」であれば自分が何を学びたいか,身につけたいかを書けばよい,ということになる。参考までに,『明鏡国語辞典』の「研究」と「学習」の語義を挙げておこう。


  • 研究:物事を学問的に深く調べたり考えたりして,事実や理論を明らかにすること。また,その内容。

  • 学習:学び習うこと。特に,学校などで基礎的な知識を系統的に学ぶこと。


ここからも,「研究」が何か新しい事実や理論を明らかにすることであるのに対して,「学習」は知識を系統的に学ぶことである,という違いが見てとれる。
 専門職大学院は,研究者ではなく高度な知識を持つ職業人を養成することが目的である。したがって,基本的には新しいものを生み出す「研究」ではなく,系統的に学んで知識などを身につける「学習」をする場だ,ということになる。しかし,大学院の開設授業には選択の余地があり,その選択は各自の目標,とりわけ大学院修了後のキャリア目標に照らして行うことになる。そこに「計画」の必要性があると言ってよいだろう。
 以上の検討から,学習計画書に書く内容を考えるうえで必要な要素として,以下を挙げることができると思われる。

  1. 修了後のキャリア目標,ならびにその後のキャリアプラン

  2. 上記を達成するために必要な知識やスキル

  3. 2.の知識・スキルのうち,大学院で身につけるべきもの

  4. 3.に密接に関連する大学院開設授業

  5. 開設授業では対応できない部分をどうカバーするか


つまり,大学院での学習を通じて何を身につけたいか,それはどのような目標を達成するためか,そのために,大学院の開設授業をどのように履修しながら学習を進めていくか,さらに,開設授業だけでまかなえない部分を,教員の指導やその他自学・自修でどのように補っていくか,などを書いていけばよい。
 このためにはまず,修了後のキャリア目標を明確に設定するとともに,その目標を達成するために,今の自分にはどのような知識やスキルが足りないかを,十分に分析する必要がある。その「差」を大学院でどのように埋めていくかが,「学習計画」の軸になると言ってよいだろう。
 その差を埋める上で中心的な役割を果たすべきなのが,大学院の開設授業である。それらを「系統的に」目標達成のためにどのように活用していくかを,十分に考える必要がある。そのためにはまず,開設授業の内容を徹底的に調べる必要がある。たいていの大学院ではシラバスが公開されているから,そのシラバスを熟読するのは必須である。そのなかで特に興味のあるもの,キャリア目標達成に必要なものを選びだし,「そこから何が得られるか」を考えていくことになる。
 また,「系統的に」というのも重要であろう。ただバラバラに授業をとるのではなく,目標達成に向かって一貫した「流れ」を考える必要があるのだ。
 1つ例を挙げよう。明治大学グローバル・ビジネス研究科の学習計画書は,A4版5~8枚で作成することになっている。募集要項を見ると,「志望理由を含めて,入学後の学習計画」を書くこととなっている。これ以上の指示は特にないが,グラフや図を使用してよいという指示から考えると,学習課題の内容も記述に含めてよいと思われる。もちろん,これは中心にはなりえないので,現状や背景の説明ばかり多いものは困る。
 それにしても,これで5~8枚というのは相当な分量で,かなりの検討作業が必要だ。

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September 04, 2011

目的を表すif S is to V構文―「SがVするためには」

 「文法書の「盲点」—目的を表すif S is to V構文」という記事で,「意思」や「目的」を表すとされるif S is to V構文の主語が無生物になっている用例をとりあげ,このような文に関する記述が文法書にあまりない点を指摘した。あわせて,これが「目的」を表すという点に注目し,in order for ~ to Vに置き換えて理解するのがよい,という説明を加えた。
 今回,この点に関連する用例に出会ったので,紹介しておきたい。Planet EarthのDVD(Junglesというエピソード)から採った文である。映像は大木が音を立てて倒れているところ。


The death of a forest giant is always saddening. But it has to happen if the forest is to remain healthy.

このif S is to V構文を「森が健康であり続けてほしいなら」と,第三者としての人間の意思・願望であると解釈できないわけではない。しかし,これが目的の意味を表していると解して「森が健康であり続けるためには」ととらえたほうが,単純でわかりやすいように思われる。置き換えて表すなら,in order for the forest to remain healhtyに相当する,ということだ。
 ついでながら,この書きかえの根底には,ある程度理論的な根拠も存在する。それは,文という形を成立するために用いられる,あまり意味のないbe動詞の存在である。たとえば,the fact that S+Vという構造を文の形にしたのがthe fact is that S+Vである。同様に,(in order) for S to Vの形をbeを入れて節の形に整えたのが,ここで問題にしているif S is to Vであると,考えることにさほどの無理はないだろう。
 実際に英語にふれていると,このようなif S is to V構文は時おり目にする。文法書にもこの趣旨の用例がもっと増えてくれるとよいと思う。

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