大学院入試英語にかぎらず英語を学ぼうと真剣に考えるならば,学習用英和辞典をしっかり活用することがきわめて大切である。ところが実際には,学習用英和辞典の基本的な使いかたすらきちんと身についていない人が多いようだ。そこで今回は,いくつかの例文を見ながら,辞書の基本的な活用法を解説しよう。なお,これはぼくが神奈川大学理学部で担当している「科学技術英語I」で説明した内容をもとにしている。使う例文は以下の4つ。使う辞書は『ジーニアス4』を想定する。
- They grow potatoes here.
- They grew more and more impatient.
- He looked angrily at me.
- He looked angry with me.
まず,辞書には語の品詞が示されている。必要に応じて品詞を確認しておこう。特にこれは,3と4で問題となりえる。
それでは1から。growのあとのpotatoesが名詞である。名詞は補語(C)になる可能性と目的語(O)になる可能性があるが,×They are potatoesと,「SがCである」というbe動詞の関係が成立しないので,これはOである。学習用英和辞典の場合,まずはこれがわからないと目的の語義にはたどりつけない。というのは,基本的には自動詞と他動詞に分けて語義を記述しているからだ。自動詞・他動詞の区別は知っている人が多いだろうが,念のため確認しておく。
- 自動詞:目的語を要求しない動詞
- 他動詞:目的語を要求する動詞
5文型の枠組みで言うと,第1文型(S+V)と第2文型(S+V+C)に用いるのが自動詞,第3文型(S+V+O),第4文型(S+V+O+O),第5文型(S+V+O+C)で用いるのが他動詞となる。1のgrowは他動詞として用いられているので,辞書の他動詞の項を見ていくことになる。『ジーニアス
4』のgrowの語義は自動詞のほうが先に挙がっているので,これを飛ばして後半の他動詞の語義に行かなければならない。
他動詞growの1の語義は[SVO]という【文型表示】で始まっている。この文型表示に注目することは,特に多義語の意味を見きわめる際にきわめて大切である。もし,調べている動詞の文型が文型表示と合わなければ,その語義はとりあえず無視してよい。今検討している1の例文はちょうどこの文型表示に合うので,この語義をまずは見ていくことになる。この語義の最初は以下のようになっている。
〈人が〉〈農作物〉を〔種などから〕栽培する,育てる,産出する
この記述の「〈人が〉」や「〈農作物〉を」は主語や目的語の内容を表している。ちょうどここでは,〈人が〉に主語のTheyが,〈農作物〉に目的語のpotatoesがうまく対応するから,この語義が適切だと判断してよい。以上から,1の例文は「彼らはここでジャガイモを栽培している」という意味だとわかる。
続いて2を見よう。more and moreは比較級を作る要素なのでいったん外しておこう。impatientは形容詞で,必要に応じて辞書を見ればわかる。文中で形容詞は以下の働きをする。
2の例文でimpatientはCになっている。つまり,この文はS+V+Cの第2文型で,grewは自動詞である。文型表示を見ると,[SVC / SV
to be C]というのが2の語義にある。この語義はさらに2つに分けられていて,そのうちbが「〈人・物・事が〉…〈の状態〉になる」となっている。これが例文2のgrowの意味で,この文は「彼らはますますいらいらしてきた」という意味だとわかる。
3と4は同じlookが用いられているが,3のangrilyが副詞であるのに対して,4のangryは形容詞である。基本文型と文の要素の基本的な理解をもとに考えれば,3は第1文型,4は第2文型であるとわかる。3はHe looked at me.に副詞angrilyが加わったものだとわかれば,「彼は怒っているような目で私を見た」鳥飼することはさほど難しくない。
少々やっかいなのは4である。というのは,この文を正確に理解するためには,angryとwithとの【連語関係】が問題になるからだ。そこで,angryに関する記述を辞書で確認してみよう。連語関係の記述は以下のような形で示される。
〔人に / …のことで〕腹を立てて〔with,《米では主に》at / for〕
上記の記述から,angry with meは「私に(対して)腹を立てて」という意味になると判断できる。このように連語関係を確認することで,with meが「私といっしょに」という意味になる,といった誤読を防ぐことができるのだ。
上記の説明で,辞書の基本的な使いかたのいったんは理解できたのではないかと思う。あとは各自で実践してほしい。また,院試塾の講座でも,こうした辞書の活用を徹底して行うよう指導している。