July 21, 2017

クジラの構文―実例をさらに追加

 昨日の「クジラの構文―さらに実例を」に続いて,さらに実例を追加で紹介しておきたい。今回は,not ~ any more than …の形を2例紹介する。


  1. Parents don't expect their kids to become explorers any more than they expect them to become pirates or sultans. (Peter Thiel, Zero to One; Notes on Startups, or How to Build the Future, Amazon Kindle版位置No.1105)

  2. We don't trade with computers any more than we trade with livestock or lamps. (ibid., Amazon Kindle版位置No.1664)


すでに別の記事で解説しているとおり,この構文では2つの命題が同時に否定される。それぞれの文でどのような内容が否定されているかを以下に示す。

  1. Parents expect their kids to become explorers.
    They [=Parents] expect them {=their kids] to become pirates or sultans.

  2. We trade with computers.
    We trade with livestock or lamps.


このブログの読者の皆さんは,そろそろこの構文を瞬間的に理解できるようになっただろうか。

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July 20, 2017

成句の解釈―give or takeの意味は?

 まずは次の引用例の下線部の文の意味を考えてみてほしい。


Chemical reactions such as coal burning typically proceed at energy scales a million times smaller than nuclear reactions. This is a reflection of the fact that the strong nuclear force, which binds the nucleus of atoms together, is much stronger than the electromagnetic force, which binds atoms together. Chemistry is about rearranging nuclei. Ernest Rutherford discovered the atomic nucleus in May 1911 in Manchester, and so Kelvin knew nothing of this hidden, higher-energy layer of physics. Because nuclear reactions typically operate at energies of the order of a million times those of chemical reactions, they will increase the energy available to the Sun by a factor of around a million,, give or take. (Brian Cox and Andrew Cohen, Forces of Nature, Amazon Kindle版位置No.2536-53)

まず,give / takeのいずれもが他動詞であるはずなのに,目的語が後に続いていない点に注目しよう。また,give or takeには主語に当たるものも見当たらない。このような「破格」の形になっていることから,このgive or takeが成句ではないかと疑ってみるのが適切だ。そのようにかんがえて辞書を引いてみると,give or take ~で「~の増減はあっても」という意味であることがわかる。ここからさらに目的語がないことなども考慮すれば,上の引用例の下線部のgive or takeは「およそ,だいたい」という意味ではないかと考えることができるであろう。

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クジラの構文―さらに実例を

 これまでにこのブログで何度か,いわゆる「クジラの構文」についてとりあげてきた。受験英語などでよく知られている構文ではあるが,実際に英文のなかで出会うと正しく解釈できない場合が多いと,これまでの指導経験で感じているからだ。今回もその実例を2つ紹介しておくので,意味がすんなりわかるかどうか,試してみてほしい。


  1. Language is no more a cultural invention than is upright posture. (Steven Pinker, The Language Instinct: How the Mind Creates Language, Amazon Kindle版位置No.156)

  2. But they have no more to do with grammatical sophistication than the fact that people in some regions of the United States refer to a certain insect as a dragonfly and people in other regions refer to it as a darning needle, or that English speakers call canines dog whereas French speakers call them chiens. (ibid., Amazon Kindle版位置No.329)


no more ~ than …の型の「クジラの構文」では,2つの命題内容が同時に否定されているというのが解釈の最大のポイントである。たとえば1.の場合,Upright posture is a cultural invention.が否定できることを基準として,それと同様にLanguage is a cultural invention.も否定できると言いたいのである。
 2.は少々複雑だ。というのも,根底にある2つの文がhave much to do with ~「~とおおいに関係がある」という慣用表現を含んでおり,このmuchがmoreになって「クジラの構文」のno moreのmoreになっているからである。つまり,2.で否定されている2つの命題は,they have much to do with grammatical sophistication / the fact that ... has much to do with grammatical sophisticationなのである。sophisticationという意味をとらえづらい語が含まれている点も考えると,下線部和訳の問題にはピッタリではないかと思う。

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英単語の意味―文脈から推測する(3)

 「英単語の意味―文脈から推測する」「英単語の意味―文脈から推測する(2)」という記事では,未知の単語の意味を文脈から推測する技法について解説した。今回もよほど動物の名前に詳しい人しか知らないであろう単語の意味を推測してみよう。


From time out of memory until today, by age two, an Inuit boy has a toy bow to play with, so that by age four he is able to shoot [A]a ptarmigan; by age six, [B]a rabbit; and by puberty, [C]a seal or even caribou. (Martin Seligman, Authentic Happiness: Using the New Positive Psychology to Realize Your Potential for Lasting Fulfilment, Amazon Kindle版位置No.2805)

まず,2歳から思春期まで,イヌイットの少年の成長過程が描かれている点を確認しよう。2歳でおもちゃの弓を手にし,4歳で下線部[A]のptarmigan,6歳で下線部[B]のウサギ,そして思春期には下線部[C]にあるようにアザラシやカリブのように,だんだん大きな獲物を撃つようになるという流れになっている。この流れのなかで考えると,下線部[A]のptarmiganはウサギよりもさらに小型の動物であるととらえることができるわけである。そして辞書を引いてみると,ptarmiganは「ライチョウ」という意味であるとわかるが,まさかこんな単語を普通に覚えている人はあまりいないと思われる。

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英単語の意味―文脈から推測する(2)

 「英単語の意味―文脈から推測する」という記事では,文脈内の言い換えに注目して未知の単語の意味を推測する方法を解説した。今回はもう少し高度な技法を解説しよう。


Over the last three decades, Mike Csikszentmihalyi, whom you met in Chapter 7, has moved this elusive state all the way from [A]the darkness into [B]the penumbra of science and then to [C]the very borders of the light, for everyone to understand and even practice. (Martin Seligman, Authentic Happiness: Using the New Positive Psychology to Realize Your Potential for Lasting Fulfilment, Amazon Kindle版位置No.2805-10)

まず,all the way from [A] into [B] and then to [C]という流れから,下線部[A]が出発点,[B]が中間点で[C]が到達点であろう,と「あたりをつけ」ておこう。また,[A]が暗闇,[C]が光の当たる場所という意味であることから,[B]は「暗いが光が当たらないわけでもない場所」程度の意味であろうと推測することができる。penumbraの正確な訳語がわからなくても,この部分の意味を理解するにはこの語の理解もここまで進めておけば十分であろう。
 さて,このpenumbraという語だが,天文学などの用語で「半影」という意味で,ふつうの学習者ならまず知らない語であろう。この「半影」という訳語も,日本語としてなじみのない人が多いのではなかろうか。『プログレッシブ英和中辞典』の語義は以下のようになっている。

  1. 《天文》(日食・月食の)半影;(太陽黒点周辺の)半暗部

  2. 《絵画》(濃淡の)淡い部分

  3. 周辺部;あいまいな境界域


上の引用例では3.の意味で使われているのだが,「周辺部」あるいは「境界域」と訳してみたところであまりピンとこないのではなかろうか。上のように推測して到達した理解のほうが,ずっとここでの意味に迫っていると言えるだろう。
 なお,天文学の用語としてのpenumbraについて,Oxford Study Science Dictionryを見ると,光の関連項目として次のように説明している。

penumbra is the area of blurred or fuzzy shadow around the edges of the umbra. This type of shadow is formed by larger, spread out sources of light. It is an area where a small amount of light has reached. (p.130-1)

参考までに,同じ本のumbraの説明も挙げておこう。

umbra is an area of total or sharp shadow behind an opaque object where no light has reached. This type of shadow is formed by point sources (see diagram) and has a clearly defined outline. (p.130)

これらの説明と考えあわせると,影のうちまったく光の当たらない中心部から影の薄い部分へ,さらには光の当たる部分へという動きが感じられるであろう。
 なお,「光」が「理解」を表すことについて,George Lakoff and Mark Johnson, Metaphors We Live byunderstanding is seeing; ideas are light-sources; discourse is a light-mediumという比喩関係があると説明し,次のような比喩表現の例を挙げている。

  • That was a brilliant remark.

  • The argument is clear.

  • It was a murky discussion.

  • Could you elucidate your remarks?

  • It's a transparent argument.

  • The discussion was opague.


これと関連づければ,上の引用例のpenumbraが「科学的理解が少しは及んでいる範囲」と理解できるであろう。

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July 19, 2017

英単語の意味―文脈から推測する

 英単語の学習というと,単語集を使って暗記するという方法が主流であるだろうが,実は文脈から推測して意味を考えたもののほうがずっと記憶に残りやすい。その具体的な方法の1つを解説しよう。


It was a simple question that went to the heart of life as Yali experienced it. Yes, there still is [A]a huge difference between the lifestyle of the average New Guinean and that of the average European and American. [B]Comparable differences separate the lifestyles of other peoples of the world as well. [C]Those huge disparities must have potent causes that one might think would be obvious. (Jared Diamond, Guns, Germs, and Steel: A Short History of Everybody for the Last 13,000 Years, Amazon Kindle版位置No.201-5)

下線部[C]のdisparitiesとはどのような意味であろうか。この文脈では,下線部[A]〜[C]が言い換えになっている。まず,下線部[A]のhugeに対して下線部[B]ではcomparable「同等の」と言っているのは結局同じように大きいということを言っていることになる。また,下線部[A]と[B]ではdifferencesがくり返されている。この流れで続いて下線部[C]を見ると,まずは指示表現のthoseがあり,さらにhugeがくり返されている。この流れに注目すると,disparitiesはdifferencesときわめてよく似た意味なのではないかと判断できるわけである。
 なお,このような推測を行った場合,確認は英英辞典でするとさらに効果的である。COBUILDでdisparityを引いてみると,If there is a disparity between two or more things, there is a noticeable difference between them.とあり,differenceとよく似た意味であったと考えたのは正しかったことがよくわかるのである。
 このように学んでいけば,単語集でただ暗記するのに比べてずっと定着しやすいし,文脈に沿った読解力も身につくのである。

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仮定法の仮定条件―if節以外で示される場合

 仮定法の構文というと,仮定条件をif節で示す形を基本として学習する場合が多いが,実際の英文を見ていると,仮定条件がif節で示される場合はむしろ少ないのではないかと思える。だから,文法問題ばかりを見ていて実際の英文に慣れていないと,仮定法であること自体が発見できない場合も多い。
 実は,仮定法のいちばんの目印となるのはif節ではなく,「過去以外の文脈で過去形になっている助動詞」なのである。このような助動詞を見つけたら,would likeのような慣用表現(これも本来は仮定法で控えめな気持ちを表したものなのだが)の場合を除いて,仮定法であると疑ってみるのがよい。以下の例で考えてみよう。


[A]In any natural history of the human species, language would stand out as the preeminent trait. To be sure, a solitary human is an impressive problem-solver and engineer. [B]But a race of Robinson Crusoes would not give an extraterrestrial observer all that much to remark on. (Steven Pinker, The Language Instinct: How the Mind Creates Language, Amazon Kindle版位置No.110)

下線部[A][B]のいずれにも過去形の助動詞wouldが含まれているが,2つの文の間にある文が現在時制になっていることからもわかるとおり,この文章の文脈は現在時であり,したがっていずれの文の助動詞も過去の意味ではない。このような場合には,仮定法であると考えて,仮定条件はどこにあるかと考えてみるのが適切である。イタリックで示している部分が仮定条件であると考えられる。つまり,下線部[A]の文では,副詞句のIn any natural history of the human speciesが仮定条件であり,この副詞句は「人間という種の自然史をどのように描いたとしても」という意味になる(少し経験を積んだ人であれば,anyが「どのように〜しても」という意味で仮定の意味を表していることが読み取れるだろう)。
 下線部[B]のぶんは少々注意を要する。イタリックにした箇所は2つある。1つは主語のa race of Robinson Crusoesで,もう1つはan extraterrestrial observerである。前者については,多くの文法書で「主語の名詞句に仮定条件が含まれる場合」として説明がされているが,後者はある程度の想像力と深く読みとろうとする姿勢が必要かもしれない。この文の訳は,少しくどめに訳すと「ロビンソン・クルーソーのような人たちが集団でいて,それを宇宙人が見ていたとしても,大したことはないと思ってしまうかもしれない」となるであろう。

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July 18, 2017

描出話法について再び

 以前,「英文読解の細かいポイント―描出話法」という記事で,直接話法と間接話法の中間的存在とも言える描出話法について,具体例を挙げて説明した。今回はまず,学習用英文法書の記述から見ていくことにしよう。『ロイヤル英文法』では,§357「特殊な話法」のなかで「描出話法」という項目を設け,そこで以下のような説明をしている。


He said …などを表現しないで,非伝達部を独立させて地の文の中に埋め込んで,八卦減車のことばを伝達者のことばのようにして述べる話法で,修辞的な技法の1つ。時制の一致や代名詞の人称などはふつうの間接話法と同じであるが,疑問文の語順などは直接話法のままであることが多い。

 それでは実例を見ていこう。

In addition, when the session was over, the experimenter told them that they could take one of the posters home. Copies of each poster were sitting rolled up in bins, blank side facing out, so that the students didn't have to worry about their taste being judged by others. Several weeks later, each participant received a phone call. [A]Each was asked how satisfied he or she was with the poster. [B]Did they still have it? [C]Was it hanging on the wall? [D]Were they planning to take it home with them for the summer? [E]Could they be talked into selling it? (Barry Schwartz, The Paradox of Choice: Why More Is Less, Amazon Kindle版位置No.1851-5)

まず,下線部[A]は通常の間接話法で,直接話法に書き直すとEach was asked, "How are you satisfied with the poster?"となる。また,下線部[B]~[E]はこの伝達部Each was askedが省略されて描出話法になっていると考えればよいであろう。上に引用した『ロイヤル英文法』の説明によれば,時制の一致や代名詞の人称などはふつうの間接話法と同じで,疑問文の語順などは直接話法のままということであるから,それぞれを直接話法・間接話法に書き直すと以下のようになるであろう。

  1. 直接話法:Each was asked, "Do you still have it?"
    間接話法:Each was asked if they still had it.

  2. 直接話法:Each was asked, "Is it hanging on the wall?"
    間接話法:Each was asked if it was hanging on the wall.

  3. 直接話法:Each was asked, "Are you planning to take it home with you?"
    間接話法:Each was asked if they were planning to take it home with them.

  4. 直接話法:Each was asked, "Can you be talked into selling it?"
    間接話法:Each was asked if they could be talked into selling it.


それぞれの「間接話法」に示した形の伝達部を独立させて,語順をふつうの疑問文と同じようにすれば,描出話法の形がえられるわけである。たとえばB.の例についてこの操作をしてみると,if they still had it→Did they still have it?となるのである。

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名詞化形の解釈―文脈から考える

 これまでのこのブログで,名詞化形の過程読み・結果読みの区別について,主に可算・不可算の用法の違いから見わける方法を解説してきた。今回は,この方法での区別が難しく,文脈と関連した判断が必要な場合について解説しよう。


This is a very good thing. The burden of having every activity be a matter of deliberate and conscious choice would be too much for any of us to hear. The transformation of choice in modern life is that choice in many facets of life has gone from implicit and often psychologically unreal to explicit and psychologically very real. (Barry Schwartz, The Paradox of Chioce: Why More is Less, Amazon Kindle版位置No.614-9)

下線部の名詞化形transformationは複数形になっていないし,またついている冠詞はa(n)ではなくtheなので,これらの手がかりから可算・不可算のどちらの用法で用いられているかを見わけることができず,したがってこの形だけからはこれを過程読み・結果読みのどちらで解釈するのがよいかも判断がつきかねる(過程読み・結果読みいずれの場合にも定冠詞のtheはつくことがある)。しかし,補語のthat節の内容と関連づけながら考えると,この補語が「変化の具体的内容」を表していることから考えて,この名詞化形は「現代生活において選ぶという行為に生じた変化」と,結果読みで解釈するが適切だと判断できるのである。

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July 17, 2017

対照強勢の実例を追加

 「対照強勢」では,反意語を対比的に用いる場合に,語のアクセントが本来の位置から反意語の対比を表す位置に移動する現象である「対照強勢」について解説したが,今回はその実例を追加で紹介しておこう。


  1. This is a very good thing. The burden of having every activity be a matter of deliberate and conscious choice would be too much for any of us to bear. The transformation of choice in modern life is that choice in many facets of life has gone from implicit and often psychologically unreal to explicit and psychologically very real. (Barry Schwartz, The Paradox of Choice: Why More is Less, Amazon Kindle版位置No.615-20)

  2. I have interacted with college students for many years as a professor, and in my experience, students who think they're in the right place get far more out of a particular school than students who don't. Conviction that they have found a good fit makes students more confident, more open to experience, and more attentive to opportunities. So while objective experience clearly matters, subjective experience has a great deal to do with the quality of that objective experience. (ibid. Amazon Kindle版位置No.1197-202)


1.の例では本来implicit / explicitとなるはずのアクセントが,対比を明らかにするために異なる部分である接頭辞に移動している。2.でも同じように,本来はsubjective / objectiveであるものが対照強勢によってsubjective / objectiveとなっているのである。

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«動物に関する英語表現の多様性