January 17, 2017

無料動画講義を作る理由

 院試塾では大学院入試関連の動画講義をYouTubeのinshijukuチャンネルで,英語関連の動画講義をinshijuku_englishチャンネルで,それぞれ無料で公開している。内容的には有料にしてもよいと思うし,それくらいの労力と時間とをかけてもいるのだが,これらの動画講義をあくまで「無料」にしているのは,大学院入試Ⅱ向けて勉強を始めたり英語学習を始めたりするきっかけをつかんでもらいやすくするためである。大学院入試にしても英語学習にしても,一般の人にはどうやら「敷居が高い」ようで,なかなか最初のきっかけがつかめないでいる人が多いようである。そのような人たちにとって,無料で見た動画講義がはじめの一歩を踏み出すきっかけとなればよいし,その一歩を踏み出すパートナーとして院試塾を選んでもらえればぼくとしてもメリットが十分あるので,これからも動画講義を作り続けていくつもりだ。

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January 15, 2017

文法の基礎知識の正確な運用―need Ving

 学校英文法をある程度学んだことのある人なら,need / wantに動名詞が続いている場合,形は能動のままで受動の意味を表すことは,このようなルールとして理解してはいなくても覚えている人が多いであろう。たとえば,This photocopier needs repairing.という文において,repairingという能動形の動名詞は受動の意味を表しており,to不定詞で書き換えるとThis photocopier needs to be repaired.と受動形になる。ところが,読解の実践においてこの知識をきちんと活用できるかどうかとなると,はなはだ心もとない人も多いのではないだろうか。たとえば,次の例ではどうだろうか。


"Marketing is about publishing great content." How many times have you heard a statement more or less like this? Tons, right? By now every marketing professional and entrepreneur on the planet understands this fundamental truth. We don't need convincing. (Ann Handley and C. C. Chapman, Content Rules: How to Create Killer Blogs, Podcasts, Videos, Ebooks, Webinars and More that Engage Customers and Ignite Your Business, Amazon Kindle版位置No.208)

この引用例の下線部は「われわれは(この点を他者から)納得させてもらう必要はない」という意味なのであって,「われわれ[筆者]が(読者にこの点を)納得させる必要はない」という意味ではないのである。ここで問われるのは,一見単純そうに見える文でも,雰囲気だけで理解せずに,きちんと文法的に考えることができるかどうかなのである。

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January 13, 2017

興味深いtough構文の実例

 英文法研究では,tough構文というのはきわめてよく知られた構文である。大学入試英語でも(このような名称で呼んではいないが)よくとりあげられる構文なので,ご存じの方も多いだろう。基本的な形は以下のようになる。


  1. It is difficult to solve this problem.
    This problem is difficult to solve _____.

  2. It is comfortable to study in this room.
    This room is comfortable to study in _____.


It is〈難易,快・不快の形容詞〉to Vで,不定詞句が他動詞+目的語,あるいは自動詞+前置詞+目的語となっている場合,この目的語を形式主語Itの位置に移動した文を作ることができるのである。この変形を適用した構文を,代表的な形容詞toughにちなんで,tough構文と呼んでいる。
 この知識をふまえて,次の実例を見てほしい。

Don't complain about the networking or the event you're attending. Don't complain about anything. The cycle of complaining is easy to get drawn into, especially at events where almost everyone is a bit uncomfortable. While complaining is an icebreaker, it is not an attractive one. (Michael Port, Book Yourself Solid: The fastest, Easiest, and Most Reliable System for Getting More Clients Than You Can Handle Even if You Hate Marketing and Marketing and Selling, Amazon Kindle版位置No.3176-86)
上の引用例の下線部では,intoの目的語であるThe cycle of complainingがItがあった位置に移動している。つまり,もとの形はIt is easy to get drawn into the cycle of complaining.である。この構文の知識がないと,ちょっと解釈に迷ってしまうのではないだろうか。

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January 12, 2017

もっと早く始めてくれていれば…

 不安をあおるようなことはあまりしたくないのだが,最近このように感じることがとても多いのでちょっと書いておきたい。それは「早く始めることの効用」である。いや,もっとはっきり,「遅く始めると手遅れになる」と書くべきなのかもしれない。
 出願締切や試験日は容赦なくやってくる。そのとき,十分に準備をしたという気持ちでいられるかどうかは試験でのパフォーマンスに影響を与えるばかりではなく,生活全体に対する考えかたも左右する。しかし「後悔先に立たず」である。だから,この記事を今読んでいる人には,今すぐ行動を起こしてほしい。お手伝いが必要ならば,院試塾サイトの「受講相談」フォームからすぐに相談してほしい。
 研究計画書をきっちり書き上げるのには,2~3か月程度は必要と考えてほしい。また,大学院入試英語を高校英語の復習からはじめていくとなると,半年~1年は必要だ。

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January 06, 2017

キャリア文書の考えかた

 社会人大学院などで出願書類のなかに,これまでのキャリアを説明するように求めた書類が含まれる場合がある。院試塾の「研究計画書作成指導」ではこのような書類も指導対象となることがあるが,このような書類の最初の原稿には,「履歴書をただ文章化しただけ」とでも評すべきものが多く見られる。なぜこのような書類を出させるのかを十分考えていないために生じる問題であろう。
 ぼくがこのような書類の指導でとにかく強調するのが,「1本の糸」をはっきりとさせてください,ということだ。つまり,大学院での研究・学習につながる問題意識がどのように醸成されてきたかを明確に述べてください,ということである。こんなことを考えていたら,最近読んでいたChris AnderssonのTED Talks: The Official TED Guide to Public Speakingに次のような一節が目に入ってきた。


 The point of a talk is ... to say something meaningful. But it's amazing how many talks never do that. There are lots of spoken sentences, to be sure. But somehow they leave the audience with nothing they can hold on to. Beautiful slides and a charismatic stage are all very well, but if there's no real takeaway, all the speaker has done―at best―is to entertain.
 The number-one reason for this tragedy is that the speaker never had a proper plan for the talk as a whole. The talk may have been planned bullet point by bullet point, or even sentence by sentence, but no time was actually spent on its overall arc.
 There's a helpful word used to analyze plays, movies, and novels: it applies to talks too. It is throughline, the connecting theme that ties together each narrative element. Every talk should have one. (Amazon Kindle版位置No.505-12)
【試訳】
 講演で大切なのは…何か意味のある話をすることだ。しかし,どれほど多くの講演がこの目的を果たしていないかは驚くほどである。たしかに,たくさんの文を話してはいる。しかし,どういうわけか聞いている人にとってはとらえどころがないのである。きれいなスライドやカリスマ的な演出もけっこうだが,話を聞いてえるところがなければ,話し手がしたのはせいぜい娯楽を提供したというだけである。
 この悲劇的な状況の最大の原因は,話し手が講演全体をきちんと練っていないからである。講演は箇条書き項目ごと,あるいは文ごとに寝られているのかもしれないが,全体の流れを考えることにはまったく時間が使われていないのである。
 演劇,映画,小説を分析するのに役立つ語があって,講演にも当てはまる。それは「流れ」,つまり話の構成要素をまとめる主題なのである。講演には必ず流れがなければならないのである。

前述したようなキャリア文書には,ここで言っているような「流れ」がないのである。

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December 31, 2016

動画講義

 院試塾ではつい最近,英語の動画講義の作成・配信を開始した。講義は今のところYouTubeのinshijuku_englishチャンネルで無料で視聴できる。で販売中の電子書籍『英文法―最初歩からの展望』の内容の解説講義と,このブログの英語カテゴリに書いているような高度な学術英語の読解を意識したものの2つのシリーズを作っている。ぜひご覧いただきたい。

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December 19, 2016

名詞化の解釈と可算・不可算の区別

 名詞化の解釈の基本として,可算・不可算の区別と意味の区別がつながっていることを知っておくと有益な場合が多い。以下のように整理しておくとよいだろう。


  • 【過程読み】「~する(という)こと」と,派生元の動詞が表す行為そのものを表す→不可算が基本[※回数を表す場合は可算]

  • 【結果読み】「~した[された]もの]と,派生元の動詞が表す行為の結果生じるものを表す→可算


これを見ればわかるように,可算・不可算の区別と名詞化形の表す意味とが密接に関連しているのである。
 このことをふまえて,次の引用例を見てほしい。

Romanticism, which encourages variety, meshes perfectly with consumerism. Their marriage has given birth to the infinite 'market of experiences', on which the modern tourism industry is founded. The tourism industry does not sell flight tickets and hotel bedrooms. It sells experiences. Paris is not a city, nor India a country―they are both experiences, the consumption of which is supposed to widen our horizons, fulfil our human potential, and make us happier. Cousequently, when the relationship between a millionaire and his wife is going through a rocky patch, he takes her on an expensive trip to Paris. The trip is not a reflection of some independent desire, but rather of an ardent belief in the myths of romantic consumerism. (Yuval Noah Harari, Sapiens: A Brief History of Humankind, Amazon Kindle版位置No.1843-8)

下線部のreflectionには不定冠詞のaがついており,可算用法で用いられていることがわかる。上で整理して示した知識を考慮せずに辞書を引くと,可算・不可算と意味との対応関係は複雑で不可解なものに感じられるかもしれないが,上の知識があれば,この例のa reflectionは「~を反映したもの」→「~の現れ」という解釈にすんなり到達することができるのである。

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December 18, 2016

英語に「未来時制」はない!―英文法の真実と「常識」との乖離

 英語を学ぶ人に「英語に時制はいくつあるか」と尋ねたら,(完了形・進行形も「時制」に含めて考えるという「論外」な考えかたは別にして)「3つ」と答える人が多いのではないだろうか。この3つとは,いうまでもなく「現在・過去・未来」の3つである。これはもはや「常識」の部類であるといってもよいだろう。しかし,多くの「常識」が厳密な検討にたえられないのと同じように,この[常識」も正しいとは言えないのである。言語学的な英文法では,英語には「未来時制」はない(一方,フランス語などのロマンス諸語には「未来形」が存在する)とするのが一般的である。その根拠を簡単に検討してみよう。
 「常識的」英文法において「未来時制」とされているのは,will+動詞の原形の形である。これが「未来時制」ではない理由を3つ紹介しよう。まず1つめは,この形に用いられるwill自体の時制は,と考えると,これは「現在時制」であると言わざるをえない,ということである。willが現在形,wouldが過去形という対立である。
 2つめは,このwill+動詞の原形という形は「未来のことがら専用」ではない,ということである。たとえば,It will be snowing in Boston now.という文においては,文末にnowがあることからもわかるように,will+動詞の原形が「現在の推量」を表しているのである。つまり,will+動詞の原形は推量を表すというのが基本であり,これをたまたま「未来の出来事の予測」に用いているにすぎない,と考えるのが適切なのである。
 さらに,3つめの根拠としては,will+動詞の原形以外の形も未来の内容を表すのに用いられる,という事実を上げることができる。たとえば,It may rain tomorrow.という文では,文末のtomorrowからもわかるとおり,may rainという形式も未来のことがらを用いるために用いることができるのである。
 以上,3つの理由をもう一度まとめてみると:


  1. will自体は「未来形」ではなく「現在形」である。

  2. will+動詞の原形は未来専用の形式ではない。

  3. will+動詞の原形以外にも未来を表す形が存在する。


というわけである。

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December 17, 2016

文法の基本を読解に活用する―動名詞の意味上の主語

 「動名詞の意味上の主語」は高校英文法で学習するポイントである。動名詞の意味上の主語(動名詞が表す動作・行為を行う人・もの)は動名詞の前に所有格または目的格で置く,というものだ。文法的には特に難しいことのないポイントだが,実際の英文で出てくるとなかなかうまく処理できない人が多いのである。実例をいっしょに検討していこう。


For thousands of years previously, history was already moving slowly in the direction of global unity, but the idea of a universal order governing the entire world was still alien to most people. (Yuval Noah Harari, Sapiens: A Brief History of Humankind, Amazon Kindle版位置No.2638)

下線部のa universal orderが意味上の主語(人称代名詞ではないので形から格を読みとることはできないが,目的格と考えてよいだろう),governingが動名詞である。名詞ideaは同格のthat節も従えるので,上の引用例のof以下はthat [S]a universal order [V]governs the entire worldと書き換えて理解してもよいであろう。

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December 15, 2016

内容本位の英文読解―表面的理解で満足しない

 英文を読むのは内容に興味があるからであって,表面的に通り一遍の訳をつけるだけで満足していてはいけないのである。しかし多くの人がこの「表面的に通り一遍の訳をつける」だけで満足してしまう。今回は実例をいっしょに検討しながら,内容をきちんと読みとる英文読解とはどのようなものかを考えてみよう。


 For most of history these man-made enclaves remained very small, surrounded by expanses of untamed nature. The earth's surface measures about 200 million square miles, of which 60 million is land. As late as ad 1400, the vast majority of farmers, along with their plants and animals, clustered together in an area of just 4.25 million square miles―2 per cent of the planet's surface. Everywhere else was too cold, too hot, too dry, too wet, or otherwise unsuited for cultivation. This minuscule 2 per cent of the earth's surface constituted the stage on which history unfolded.
 People found it difficult to leave their artificial islands. They could not abandon their houses, fields and granaries without grave risk of loss. Furthermore, as time went on they accumulated more and more things―objects, not easily transportable, that tied them down. Ancient farmers might seem to us dirt poor, but a typical family possessed more artefacts than an entire forager tribe.
 While agricultural space shrank, agricultural time expanded. Foragers usually didn't waste much time thinking about next month or next summer. Farmers sailed in their imagination years and decades into the future.
 Foragers discounted the future because they lived from hand to mouth and could only preserve food or accumulate possessions with difficulty. Of course, they clearly engaged in some advanced planning. The creators of the cave paintings of Chauvet, Lascaux and Altamira almost certainly intended them to last for generations. Social alliances and political rivalries were long-term affairs. It often took years to repay a favour or to avenge a wrong. Nevertheless, in the subsistence economy of hunting and gathering, there was an obvious limit to such long-term planning. Paradoxically, it saves foragers a lot of anxieties. There was no sense in worrying about things that they could not influence.
 The Agricultural Revolution made the future far more important than it had ever been before. Farmers must always keep the future in mind and must work in its service. The agricultural economy was based on a seasonal cycle of production, comprising long months of cultivation followed by short peak periods of harvest. On the night following the end of a plentiful harvest the peasants might celebrate for all they were worth, but inthin a week or so they were again up at dawn for a long day in the field. Although there was enough food for today, next week, and even next month, they had to worry about next year and the year after that. (Yuval Noah Harari, Sapiens: A Brief History of Humankind, Amazon Kindle版位置No.1567-84)

下線部のagricultural space shrankとは,先行する2段落で述べられているように,農業を始めたことで人類が土地に縛られて狩猟・採集を行っていたころに比べて行動範囲が狭まったことを意味している。また,agricultural time expandedとは,後続の部分に書かれているように,農業を始めると狩猟・採集時代に比べて心配すべき時間の範囲が長くなったことを指していると考えることができる。単に「農業の空間は縮んだが,農業の時間は拡大した」と「訳せる」だけでは内容がきちんとわかったとは言えないのである。

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«mentalは「精神的な」か?―文脈から正確に解釈する